【海外レポート】
会社の経営資源を最大限に活用 カプラン・ハイヤー・エデュケーション(kaplan Higher Education) |
ワシントン・ポスト社の資本によるカプラン株式会社(本社ジョージア州アトランタ)の一部門であるカプラン・ハイヤー・エデュケーションは、コンコード・ロースクールをはじめ、全米16州に70の大学を展開するほか、オンライン大学システムも抱える営利組織として、着実に学生数を増やしている。
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急速に増加した社会人学生
アメリカでは1990年代半ば以降、株式会社による大学が大幅に増えており、01年には2年制大学で512校、4年制では277校に上っている。これは97年と比べて2.3倍の大学数となる。
04年4月のニューヨーク・タイムズの記事によると、大学ビジネスの市場規模は02年の時点で210億ドルに達している。現在、大学生の12人に1人は株式会社などによる営利を目的とした大学(以下営利大学)に通っており、学生数の伸び率は非営利の大学の約3倍に当たるという。
その背景には、すでに社会人として働いている人々がよりよいポジションを得たり、有利な転職をするために大学に進学、あるいは復学し、新しい技術や学位の取得を目指す現状がある。専門的な技術や学位に的を絞った営利大学は、このような社会人を中心に確実に学生数を増やしている。
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認証評価で質を保証
日本の文部科学省のような全国的な教育行政機関を持たないアメリカでは、非営利の大学は州政府から設立認可を受ける。しかし、営利大学の場合は州政府の認可がなくても設立は可能だ。
また、認可自体も形式的なもので、各大学の運営や教育の内容の評価は民間の非営利組織による認証評価制度(Accreditation)に委ねられている。この民間組織を構成するのも大学で、自ら基準や規則をつくり、一定期間のうちに評価を受けることを会員校に義務付けている。この組織に加盟せず、評価を受けないという選択肢も大学にはあるが、会員校として認証されているか否かによって大学の社会的信頼度は大きく変わる。
株式会社立の大学も従来の大学と同様、全米で六つある認証団体のいずれかから認証を受けることによって「学位を出せる大学」となる。
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経営理念は優れた教育の提供
政府からの支援や寄付金によって運営資金の半分を賄う非営利大学と異なり、営利大学では収入の9割以上を学生の授業料に頼っている。当然、一人でも多くの学生を獲得することが大学経営の重要なポイントとなるが、カプランの経営理念は「高い水準の教育サービスを提供すること」と、至ってシンプルである。
「優れた教育を提供することが優秀な学生を集める要因であり、その成果は卒業生の高い就職率と優良な就職先として如実に現れる。また、卒業生に対する雇用先の評価が新たな優秀な学生の獲得につながる。明確な目標を持った真剣な学生を得ることが、大学経営にとって最も重要なこと」と、カプラン社の副社長兼総合法律顧問のハロルド・O・レビィ氏は語る。
では優れた教育を提供するには何が重要なのか?「まず優秀な教員を揃えること、次に学生のニーズに見合ったプログラム作り、各大学のカリキュラムの一定化、優れた教科書や教材の供給などがあげられる」とレビィ氏は言う。
学生が目標としている専門職に必要な技能・技術を習得するために、カプランでは一般的な教育とキャリア・トレーニングを複合したプログラムを提供している。プログラムは市場ニーズや雇用の見通しについての詳細なリサーチに基づき決定している。
またカリキュラムの一定化やオリジナルの教科書、教材の供給は全米に70ものキャンパスを持ち、ダブリンとロンドンにも提携校を持つ大規模な営利組織だからこそ可能ともいえる。カプラン社は高校生向けの大学入試準備プログラム(模擬試験や予備校経営)と、大学生、社会人向けの大学院進学プログラムを全米規模で展開しており、そこから得られる安定した資金力が営利大学の運営を支えている。
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ニューハンプシャー州、ヘッサーカレッジの教室で学ぶカプランの学生たち |