ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
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公立大学の岐路
 大学改革の荒波は、公立大学にも押し寄せている。政府の三位一体改革が地方財政の悪化に追い打ちをかける形で、経営を圧迫。国立大学が法人化したことで、公立大学のあり方を問う声も高まっている。全入時代が迫る中、自治体が税金を投入して高等教育サービスを提供する新たな意義とは何か。公立大学法人制度は抜本改革につながるのか。法人化による意思決定システムの変化や公立大学同士の統合は、地域の高等教育全体にどんな影響を及ぼすのか。公立大学の新しい動きを探りつつ、これらの問題を考える。
データからみえるもの
 もともと広報に積極的だった私立大学と情報発信に力を入れ出した国立大学の間に隠れる形で、公立大学は「見えにくい存在」だった。ここでは、各種データをもとに、公立大学の全体的規模や財務状況を概観する。さらに、地方の公立大学の声を通して、設置者との関係における変化の一端を紹介する。
全体の半数以上が1学部のみ

 まず、図表1で公立大学の規模を確認しておこう。
図表1 設置形態別の大学数と学生数(04年度)

図表

 学校数をみると、04年度現在、706ある4年制大学の1割にあたる77校を公立大学(公立大学法人を含む)が占めている。都道府県別では、広島が県立3、市立2の計5校で最も多い。設置ゼロは栃木、鳥取など6県。一方、学生数は、全281万人の4%にとどまっている。これは、国立・私立に比べると規模の小さな公立大学が多いためだ (図表2)(以下、公立大学協会発表のデータは03年度版が最新となっているため、これを紹介・分析する)。
図表2 公立大学の設置学部数(03年度)

図表

 学部が五つ以上あるのは6校のみで、商・法・理・医など8学部がある総合大学・大阪市立大学は特異な存在といえる。1学部のみの大学が半数以上を占めている。
 では、主にどんな学部が設置されているのか。図表3では、公立大学の全学部を系統別に分類して割合を示した。
図表3 公立大学の学部系統の内訳(03年度)

図表

 保健福祉医療系は、社会科学系統と同数の29学部あり最も多い。さらにその内訳をみると、看護21、保健福祉3、保健医療3など、看護学部の数が突出している。医学系統に分類された中にも、看護福祉、看護栄養、人間看護という学部名が一つずつある。


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