ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
宮澤夏樹
公立大学協会事務局長
宮澤夏樹
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活性化する公立大学協会
〜組織強化と研究、情報発信で改革の流れを後押し〜
 公立大学協会は、加盟大学の法人化や再編統合など改革への取り組みを支援するため、事務局を常設して調査・研究を踏まえた助言をするなど、組織強化を進めている。宮澤夏樹事務局長に新生公大協の活動概要を聞いた。
交流団体から問題解決のための組織へ

 公立大学協会の会員は77校で、加盟率は100%だ。1949年の設立から半世紀にわたり、学長が年に1度集まって情報交換を行うなど、実質的には親睦・交流団体として存続してきた。
 会長の任期は3年間で、東京都立大学、大阪府立大学など代表的な公立大学の学長が持ち回りで就任するのが慣例になっていた。従来、事務局は会長の所属大学に置いていたため3年ごとに移動し、その大学の職員が協会の事務局業務も担当。文部科学省からの通知など制度の変更点を加盟校に伝達したり、入試日程をまとめて発表するなど、協会の機能はもっぱら事務的な処理にとどまっていた。
 公立大学協会の宮澤夏樹事務局長は、 「公立大学の設置者はそれぞれ異なり、置かれた環境や抱える問題も違う。だから、組織的に取り組む課題が見えにくかったのでしょう」と指摘する。
 しかし、公立大学を取り巻く状況は大きく変化している。学生募集環境の厳しさという国公立共通の課題に加え、地方財政の悪化を受けての経営的な課題も浮上。 「こうした変化に対処するためには、加盟大学が情報を共有し、有効な対応策を考えていかなければなりません。そのためには、抜本的な組織改革の必要がありました」。
 新体制がスタートしたのは01年度。文科省に近い東京・西新橋に常設の事務局を置いた。元東京都職員の宮澤氏が事務局長に就任。企画を担当する民間企業出身の事務局次長も加わり、常勤職員2人とアルバイト5人の体制で運営している。また、改革の実施にあたっては強いリーダーシップを持つ会長が必要だとの判断から、歴代幹部の推薦で岩手県立大学の西澤潤一学長が就任した。
 「公立大学には解決すべき課題が山積しているが、個々の大学や設置者だけでは解決が困難な問題も多い。各大学が共通課題を洗い出し、優先順位を決めて研究し解決策を提示する問題解決型の組織に生まれ変わろうというわけです。そしてそれぞれが、設置者である自治体や住民のニーズに応えられる大学になるよう支援することが、究極の協会の活動目的」という。
 こうした考え方の下、公立大学法人の制度化にも同協会が重要な役割を果たした。国立大学の法人化が論議される中、公立大学だけが改革から取り残されるという危機感を募らせた協会幹部の学長たちが、「公立大学も法人化を選択できるような制度を作ってほしい」と文科省などに働きかけ、本格的に動きだした経緯がある。
 「具体的な内容についても、当時の協会に設けられた委員会が総務省や文科省と細部を詰めた上で、原案を総務省に提出し、若干の修正を加えたもので、実質的に公大協が制度の整備を主導したといっていいと思う」


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