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横浜市文化芸術都市 創造事業本部 創造年推進課担当課長 野田邦弘
Profile
1951年福岡市生まれ。78年に横浜市役所に入り、97〜02年市立大学事務局職員として大学改革、生涯学習、国際交流などに取り組む。『文部科学教育通信』連載「これからの大学と経営人材養成」(02年)、「続・これからの大学と経営人材養成」(03年)で公立大学改革について執筆。公立大学協会法人化特別委員会人事制度専門委員。武蔵工業大学、桐朋学園芸術短大非常勤講師。元文化経済学会理事長。著作に『生涯学習の文化経済学』(00年、芙蓉書房出版)『イベント創造の時代』(01年、丸善)など。 |
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【寄稿】
公立大学職員に求められるもの |
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■公立大学の使命
納税者の理解にもとづく地域貢献が最大のテーマ
地方自治体が設置する公立大学の固有の存在意義は、教育・研究の水準を向上させながら、併せて地域に貢献することである。公立大学は、教育・研究を推進するという大学一般に共通するユニバーサルな面と、地域社会に根ざした存在であるといったローカルな面を併せ持っている。とりわけ公立大学の運営には、この二つのバランスをとることが求められる(図表1)。
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図表1 大学の機能 |
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これまで多くの公立大学は、国立大学と同様、図表にあるIの「ユニバーサル・教育研究」を志向してきた。しかし今後は、設置自治体の意向、つまり公立大学のスポンサーとしての納税者の意向を重視した大学への転換が一層求められる。それは、IIの政策形成への協力やIIIの地域貢献などへの取り組みである。
自治体にとっては大学の設置は選択的であり、大学運営は自治体の様々な政策課題の中で必ずしも優先順位が高いとは限らない。厳しい地方財政のもとで、公立大学の設置意義を自治体や納税者に理解してもらい、大学への支援を得るためには、大学自らがそのレゾンデートル(存在理由)について明らかにする活動を積極的に展開していく必要がある。
公立大学は、設置自治体、地域や市民に対して貢献することが当初より期待されているし、そのための条件も整っている。公立大学は、設置自治体の持つ様々な行政上のデータやノウハウ、さらには人脈などの行政資源をそのまま教育・研究のために活用することが可能である。これは、国立大学法人や私立大学に比べて有利な点である。
かつて大阪市立大学の前身大阪商科大学の設立に尽力した元大阪市長・関一は、「大阪市立大学は学問の受売卸売の市場ではない。大阪市を背景とした学問の創造が無ければならない。この学問の創造が学生出身者、市民を通じて、大阪の文化、経済、社会生活の真髄となって行く時に、設立の意義を全うする者である」(「市立商科大学の前途に望む」1928年)と、地域への貢献を市立大学の存立根拠に挙げている。
公立大学の地域貢献の具体例としては、医師や看護師の養成、地域への高度先進医療の提供、市民の学習ニーズに応えるリカレント教育などの生涯学習事業、地域産業界からの委託研究の受け入れや共同研究といった産学連携、市や県など公的機関への委員・講師派遣、市などに対する政策提言機能など、多岐にわたる(図表2)。
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図表2 公立大学と設置自治体の連携 |
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