ベネッセ教育総合研究所
特集 今、なぜキャリア教育か
 
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【ケーススタディ1】
早期キャリア教育で就職内定率も向上
金城大学短大部ビジネス実務学科
 金城大学短大部ビジネス実務学科では、全教員あげて「キャリア形成支援プログラム」に取り組んでおり、2004年度「特色ある大学教育支援プログラム」にも採択された。

全教員が受講するキャリア・カウンセリング講座

 就職までの準備期間が限られる短大では、早期のキャリア教育が重要なポイントになる。金城大学短大部の場合、幼児教育学科、同専攻科福祉専攻、美術学科では、入学当初から将来の目的意識が明確な学生が多いが、ビジネス実務学科では、目的そのものを探すために入学してくる学生が目立っていた。
 就職進学指導部長補佐を務める岡野絹枝助教授は、ビジネス実務学科の学生を「社会人になる前に何かを習得したいという希望は強いが、具体的な取り組み方がわからないでいる」と分析。そうした問題を解決するためには、専門技能を身に付け、社会に対する意識を高めることが必要と考え、01年度から試行錯誤を繰り返しながら「キャリア形成支援プログラム」を構築してきた。その柱は三つある。
 第一は「資格取得支援」だ。従来も資格取得には力を入れており、課外講座だけでなく正課授業の中でも資格に対応した教育を行ってきた。ただ、2年間のカリキュラムの中に分散していた関係で、受講機会が限られていたこともあり、将来の進路と結び付けた体系的な資格取得が難しい面があった。
 そこでカリキュラムを大幅に改定。1年次の間にビジネス実務に関する各種検定資格を取得できるよう、授業を編成した。04年度現在、正規の授業を通して23種類の資格が取得可能で、2年次は、さらに上級の資格に対応する個人指導講座も設置している。
 第二の柱は「社会的スキル習得支援」。社会的スキルのうち、「積極的な挨拶行動」「自己PRなどの自己表現」「基本マナー」の三つを就職活動に必要とされるスキルとして設定し、これらの能力育成をカリキュラムに組み込んだ。
 1週間で集中的に授業を行う「基礎教養」を1年次前期の必修とし、挨拶や自己表現、基本マナーのトレーニングをするほか、非常勤を含むビジネス実務学科の全教員の協力により、キャリア形成支援プログラム以外の各授業でもスキル指導を実施。後期必修の「企業研究」では、企業人による講義、企業研修、フィールドワークなどを通してスキルを身に付け、キャリア意識も向上させる。
 第三の柱は「キャリア・カウンセリング」。金城大学短大部では2年間持ち上がりの担任制により、きめ細かな就職指導を行っている。学生の資格取得状況や進路希望などを記した「学生カルテ」を作成し、担任や学科の全教員が適切なアドバイスができる体制を整えた。
 全教員に対して、キャリア支援に関する教育能力を向上させるための「キャリア・カウンセリング講座」を実施している。外部講師を招き60時間受講するもので、「教員自身もキャリア支援に関する勉強を望んでおり、講座に対する評判は良い」と岡野助教授。04年度中には、ビジネス実務学科のほぼすべての専任教員が受講を終える予定だ。

キャリア意識が高まり、学生の行動も変化

 キャリア形成支援プログラムの実施による具体的成果も出始めている。 例えば、約150人いる1年生の延べ資格取得数は、01年度は180だったが、02年度は362と倍増し、03年度はさらに434へと増加した。 学生の意識や行動も確実に変化している。1年次修了時点でのアンケートでは、「できるだけ欠席をしない」「授業に集中する」「自宅学習に努める」の項目で、6割以上の学生が「大いに良くなった」と回答している。
 キャリア形成支援プログラムがスタートして以来、「早めに就職活動を始める学生が確実に増えてきた」(岡野助教授)こともあって、03年度の就職内定率は、前年度を25ポイントも上回る86.3%へと上昇。プログラムが就職実績に与えた有効性を証明する結果となった。
 今後は、従来の「学生カルテ」の内容をデータベース化し、「キャリアカルテ」として拡充を図る。さらに「教員のキャリア・カウンセリング能力を向上させるためのブラッシュアップ講座も検討中」と岡野助教授は言う。地域の高校教員にキャリア・カウンセリング講座を公開するなど、地域のキャリアサポートセンターの役割を担うことも計画している。



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