ベネッセ教育総合研究所
特集 今、なぜキャリア教育か
 
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【ケーススタディ4】
キャリア教育中心にカリキュラム改革
京都橘女子大学
 京都橘女子大学は2005年度からの共学化に合わせ、キャリアセンターが実施する課外講座などを正規カリキュラムに組み込み、8科目16単位をキャリア開発科目群とする予定だ。

人材育成の観点から教育内容を見直す

 「自立した女性の育成」をスクールモットーに掲げる京都橘女子大学は、就職支援やキャリア支援で常に先進的な取り組みを行ってきたが、05年度からさらにそのシステムを全面的に見直す。
 改革論議には2年間を費やした。理事長や学長、教職員の代表などによる「基本構想委員会」を設置し、大学の現状と将来像を徹底的に分析した。その結果、共学化や看護学部の新設などが実行に移されることになった。
 キャリア教育の充実は、今回の改革の大きなポイントだ。これまで正課のカリキュラムは教務課が、課外のキャリア教育は就職課や学生支援課キャリアセンターがそれぞれ担当し、別々に運営されてきたが、「人材を育成するという観点から言えば、本来は統合されるべきもの」(梅本裕副学長)との判断から、両者を一体化し、体系的なキャリア教育を実施することに決まった。
 新カリキュラムのスタートを前に、04年度から一部を前倒しし、現行カリキュラム内でキャリア教育を実施する試みも始めている。進路や就職に目を向ける授業として、「職業と社会」「ライフマネジメント論」「国際経済論」などの科目を展開。これらのパイロット授業に対する学生の意見を吸い上げ、教授方法のノウハウを蓄積して、新カリキュラムに生かす方針だ。
 キャリア教育の重要性を教員に認識させるため、学内体制も整備した。教務部長と学生部長が学生の育成方策について協議する「部長会」を設置し、主に就職を取り巻く社会情勢について共通認識を持つための「教職員学習会」も開催している。
 また、「FD委員会」では、03年度から1、3年生を対象に一般常識などを測る「キャリアテスト」を実施。学生の能力を把握して教育効果を測定し、カリキュラム改善に役立てている。

キャリアとベーシックスキル、二本柱の科目群を設定

 新カリキュラムのキャリア教育は、全学共通の「ベーシックスキル科目群」と「キャリア開発科目群」に大別され、4年間を通じ体系的に開設される。
 ベーシックスキル科目群は、外国語、日本語表現、コンピュータリテラシーなどから成る。従来の一般教養科目との違いは、社会で必要とされる能力の育成に重点を置いている点だ。例えば、英語教育ではTOEIC730点以上を取ることを目標とし、日本語表現教育では、日本語文章能力検定の受験を想定した「日本語表現」を設置している。
 一方のキャリア開発科目群は、「キャリアデザイン入門」「ビジネスリサーチ&プレゼンテーション」「キャリア開発講座」などで構成される。
 キャリアデザイン入門は、1年次の必修科目。自分の可能性と特性を見つめつつ、職業とは何かを考える。ビジネスリサーチ&プレゼンテーションは、企業や業界について研究・発表する科目。キャリア開発講座は、企業や行政の第一線で活躍する人を招いて、仕事の面白さや創造性について学ぶものだ。また、インターンシップ・プログラムの単位認定も行う。いずれも選択必修科目となる。
 これらのうち、ベーシックスキル科目群は39科目68単位、キャリア開発科目群は8科目16単位を開設し、キャリアへの幅広いニーズに対応する。
 キャリア教育の体系化に伴い、キャリアセンターの課外講座も見直す。例えば、従来あった「ビジネスウーマン養成講座」をキャリア開発科目に統合し、「自分力トレーニングジム」としてすでに先行実施している。
 梅本副学長は、今後のキャリア教育の方向性について、「学生の実態に応じた合理的な科目開発、キャリアについて率直に議論できるキャンパスカルチャーの醸成、それを踏まえた上でのジョブマッチング機能の強化という三つの組み合わせでキャリア支援をしていきたい」と展望を語る。



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