ベネッセ教育総合研究所
特集 今、なぜキャリア教育か
 
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【キャリア教育の周辺事情】
若年者の雇用促進に加え、大学生の職業意識の形成も支援
厚生労働省
 フリーターやNEET(若年無業者)の増加などを受けて、国が本格的に若年層の就業支援に乗り出している。厚生労働省では、若者版ハローワークともいえる「ジョブカフェ」の全国展開に取り組むとともに、「ジョブパスポート」の開発などに向けた検討を進めている。

キャリア教育の視点を持つ「ジョブカフェ」を設置

 就職しない若者というとフリーターが思い浮かぶが、厚生労働省若年者雇用対策室の伊藤正史室長は、「フリーターは、雇用形態が不安定なだけで、総じて働く意欲はある。問題なのは、働こうとしない若者が増加していること」と指摘する。03年の労働経済白書によると、35歳未満の非労働力人口、すなわち就業も就職活動もしていない若年無業者は64万人で、このうち、未婚で通学や家事もしていないNEET(Not in Employment, Education or Training)に相当する人数は52万人。若年労働力低下の大きな要因となっているという。
 こうした状況を受けて、政府は「若者自立・挑戦プラン」を策定。内閣府と文部科学省、厚労省、経済産業省が横断的に連携し、地方自治体や民間企業との協力の下に、雇用促進や人材育成などの各種支援事業に乗り出している。
 厚労省でも様々な支援策を打ち出しているが、中でも「若年者のためのワンストップサービスセンター」(通称「ジョブカフェ」)の整備は、大学生に関係の深い事業の一つ。従来は、一般の求職者はハローワーク、学生の求職者は学生職業センターなどで対応していたが、一つの窓口で就職相談から職業訓練、職業紹介までを担当するわけではなかった。
 そこでジョブカフェでは、これらの業務を一元的に行うようにした。すなわち、キャリア教育の視点を持ちながら、適性判断や適職診断を含むカウンセリングを行い、カリキュラムを作成した上で、職業訓練や研修、インターンシップなどを行い、就職に結び付けるまでのプロセスを一つの窓口で対応しようというわけだ。
 ハローワークとの違いの一つは、「若者の目線でのサポート」(伊藤室長)だ。「例えばジョブカフェの企画や運営に、若者自身を参加させる試みも広げていきたい」と言う。
 04年4〜6月の31府県での実績では、約11万人が利用し、その支援を受けて就職した人は約3200人。現在までに43都道府県に設置されており、支援の輪はさらに広がりつつある。

若者版職務履歴書「ジョブパスポート」を開発

 フリーターとNEETへの対策では、就職支援と同時に、このような若者の増加を防ぐための学生・生徒へのキャリア教育も重要になる。厚労省でも05年度から、「若者人間力強化プロジェクト」を立ち上げ、職業意識形成の支援の強化を図る。
 ここで注目されるのは、インターンシップやボランティア活動、資格取得など、職業に関する体験の内容や成果を記録する「ジョブパスポート」の開発だ。学生・生徒が、ジョブパスポートを作成することを意識して活動することは、一種のキャリア教育にもつながる。
 ジョブパスポート作成の指導者には、大学のキャリアセンターなどの職員や学校の教員、ジョブカフェの職員を想定し、マニュアルを整備する計画だ。伊藤室長は、企業にも、ジョブパスポートを現行のエントリーシートのように採用時の参考にしてもらえるよう普及を図りたいという。
 このほか厚労省では、経済団体に働きかけてインターンシップの受け入れ企業を開拓したり、インターネットを使った情報発信やマッチング機能を充実させていく予定だ。例えばインターネット上で、企業に対する求職者情報の発信・検索サービスや、企業からの学生に対するリクエストメール発信サービスなどを行っていくという。また各学生職業センターにおいても、登録求人に対するきめ細かなフォローや、未内定学生を対象にした重点的なカウンセリングなどを実施していく。さらに、大学の標準的な就職支援メニューや具体的なノウハウを示した「就職支援マニュアル」を開発するなど、多くの施策を用意している。
 「こうした活動が社会に浸透していくには時間がかかる。文部科学省と連携して、まずは学校ルートを通じて、これらの支援策の普及浸透に努めたい」と伊藤室長は話す。



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