ベネッセ教育総合研究所
特集 コンペ型事業を考える
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教育評価の代替指標のシステムとプロセスを超えて

 通常の評価では、到達目標をどの程度達成したかを測る。しかし、「教育的取り組み」はスパンが長いから、目標達成を直接に評価することは難しい。そこで教育システムと教育プロセスを代替指標として使う。特に、その取り組みに構成員がどのくらいの重さで関わったかということは、重要な評価内容になる。
 「特色GP」の審査は合議制である。申請1件について平均10人の評価者が書面審査をする。そこでの評価項目ごとの評点を基礎にしてヒアリングを行い、各審査部会で合議の上、選定する。各審査部会は20〜30人の審査委員で構成されるため、評価には当然ばらつきが出る。このばらつきを、合議のプロセスを経て一つの結論に収斂させるのだ。
 つまり教育評価というのは、それに関与するすべての者の共同作業である。評価する側とされる側の共同的な営みであり、評価者の共同的営みでもある。評価する側は、「評価する」ということによって自らの教育活動を再考する。評価し合うことが教育的なのだ。すなわち、評価行為自体がFDなのである。あるいは“Faculty Development”というよりは、“University Development”=UDというべきであろう。
 教育評価において重要なことは、最終的に当事者の見識が決め手になるということである。申請者の教育への高い見識は、自然に審査にあたる者の琴線に触れ、高い評価を獲得する。逆に評価者の高い見識が、取り組みの真の価値を発見する。評価者の見識が、教育評価の代替指標であるシステムとプロセスの評価のレベルを超えさせ、教育の実質的内容の評価にまで最終的には及ぶのである。
 採択を最終的に決定する要因は、評価項目ごとの評点の単純総和ではなく、評価者の見識に基づく総合的判断である。教育評価においては、評価される者と評価する者の見識が響き合うところで、意味のある営みが出現するのである。
 教育評価を正当に行うためには、「実地調査を行うことが不可欠である」という意見がある。しかし、完全な評価というものはそもそもあり得ない。コストパフォーマンスを考慮すれば、限られたマンパワーと予算の中で最善を尽くすしかない。
 「特色GP」は文科省の政策であるから、大学を活性化するために効果があったかどうか、という政策の評価をすべきである。あくまでも「優れた教育とは何か」を日本の大学全体で考えるムーブメントであると認識している。ヒアリングだけでも、その中から本音を引き出すことがかなり可能であることを、審査経験を通して実感している。


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