ベネッセ教育総合研究所
特集 コンペ型事業を考える
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専門家の視点を評価所見に盛り込む

 申請1件につきペーパーレフェリー3人に評価所見を依頼する点は変わらない。しかし03年度は、ペーパーレフェリー1人に1週間で約30件の評価所見を依頼した。04年度は、ペーパーレフェリーの数を約140人から約180人へと増員。期間も約1カ月間に延ばし、全員から評価所見を提出してもらい、公平性を確保した。
 同じ評価者という立場でも、審査委員は名前が公開され、「ペーパーレフェリーが非公開なのはおかしい」との批判もあった。しかし、ペーパーレフェリーには採択校を決める最終的な議論の場への参加権と投票権が付与されておらず、その責任も負っていないことから非公開が妥当と判断された。
 審査の観点も若干変更した。前年度は「特色性」「組織性」「実績」「共通性」「公共性(社会的使命)」の5項目で審査したが、04年度は「実績」「共通性」「公共性」をはずし、「取り組みの実施プロセス」「有効性」「将来性(発展性)」を追加した。審査委員などから、何をどう評価するのか分かりにくいと批判のあった「公共性」や他大学の参考になるかどうかをみる「共通性」は、「特色性」などに含めた。
 「取り組みの実施プロセス」について工藤氏は、「新しい教育プログラムを導入するには、何かきっかけがあったはず。どんな問題意識の下で、具体的な教育目標をいかに設定し、プログラムとして展開してきたのか、そのプロセスを評価するもの」と説明する。
 「有効性」は、過去の実績を評価するというよりは、「どのように効果が上がったのか、その根拠を明らかにする」(工藤氏)ためだ。教育の有効性をみるには、プログラムの目的に応じて、学生の履修率や国家資格取得率、アンケート調査結果、外部評価など様々な指標が考えられる。そこで04年度は申請書の様式を変更し、これらに関するデータ・資料類を2ページ以内で添付できるようにした。03年度は添付を認めず、図表等は申請書の中に入れることにしていた。
 03年度は審査委員とペーパーレフェリーの位置付けの違いがはっきりするよう、両者の評価基準を少し見直した。ペーパーレフェリーには、申請内容に関わる分野の専門家を起用し、「特色性」「有効性」「将来性」の3項目について専門的な立場から評価してもらい、高等教育全体の視点から評価する審査委員との違いを出した。
 審査委員とペーパーレフェリーへの事前説明も充実させた。03年度は説明会を1回ずつ開いたが、04年度は大学と短大を分け全部で4回の説明会を行い、評価者の共通理解を深めるように努めた。  ヒアリング時間も変更した。大学のプレゼンテーション20分、質疑応答10分という03年度の時間配分に対し、「審査委員から、申請書に記載されていないことを突っ込んで聞きたいというリクエストがかなり寄せられた」(工藤氏)ことから、質疑応答を2倍の20分とし、プレゼンテーションを15分に短縮した。



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