ベネッセ教育総合研究所
特集 コンペ型事業を考える
 
PAGE 22/25 前ページ次ページ


【レポート:現代GP】
通訳トレーニングで英語力向上を図る
神戸女学院大学
 神戸女学院大学はテーマ3「仕事で英語が使える日本人の育成」で採択された。特色GPに続く再挑戦で、独自の教育プログラムが現代GPの具体的なテーマとうまくマッチした例といえる。

英文学科の授業で効果

 現代GPで採択された神戸女学院大学の「通訳トレーニング法を活用した英語教育―英語運用能力向上の新しいプログラム―」は、文学部英文学科で実績を上げている「通訳養成プログラム」を全学的に発展させた新たな取り組みだ。
 通訳トレーニング法を導入した英文学科のプログラムは2002年度から実施しており、1年間でTOEICスコアが平均100点以上も上昇するなど、英語力の向上に目覚ましい効果を上げてきた。同プログラムを統括する松縄順子教授は、「通訳は、相手の言葉の理解、分析、トランスレート、発語と、多くのことを同時にこなさなければならず、極めて高い集中力が要求される。また即座に迅速な言語変換を行うために自主的な判断力が課せられる。その集中力と主体性が英語の運用能力を飛躍的に高めてくれます」と分析する。
 新プログラムは、通訳育成に必要な科目32単位で構成され、全学部の2年次から4年次に実施。定員は60人で、一定水準以上の英語力を有した意欲ある学生を対象とするため、TOEICの成績順で受講者を決定する。この通訳プログラムは高度の集中力と思考力を養い、知識を蓄積しつつ、英語の運用能力を段階的に高めるもので、
(1)学習能力基礎開発
(2)英語の運用能力強化
(3)異文化理解、国際関係、言語セマンチックス(意味論)
などの知識の修得を達成目標にしている。
 2年次は、相手が話した内容を日本語でまとめる「ユニリンガル・トレーニング」や英作文科目、3・4年次は逐次通訳や同時通訳に必要な理論や実技などを学ぶ。通訳に必要とされる明瞭な発声を身に付けるための訓練には音楽学部の教員が、「国際関係論」など背景知識に関する科目は総合文化学科の教員が担当する。
 神戸女学院大学は、少人数制によるリベラルアーツ教育で知られている。その実績で03年度の特色GPに応募したが、不採択に終わった。原田園子学長は、「本学では全開設科目の60%以上が、問題発見・解決型のワークショップ授業。実際に高い効果を上げており、自負があっただけに意外な結果でした」と振り返る。
 04年度は実績を数字に示して特色GPに再挑戦したが、教職員の負担増や経費増につながり、これの克服が課題ではという理由で不採択となった。「負担をいとわない努力こそが本学の誇りだったのですが」と原田学長は言う。

全学の教員が参加

 学内では「通訳養成プログラム」の全学への開放が議論されている最中だったこともあり、このテーマで現代GPに応募しようということになった。
 すぐに学長以下8人の教員と事務長ら2人の職員からなる「現代GP英語ワーキンググループ」を結成した。メンバーは全学部の教員で構成され、英文学科の教員がプログラムの骨子を組み立て、他学科がその教育に役立つ科目を提供する形で協力し、プログラムの内容が固められた。
 申請プログラムが教育課程の中にきちんと組み込まれていることや、客観的な評価体制が確立していることを明示し、教育理念とプログラムの理念の結び付きも申請書に記述した。過去の実績はもちろん、通訳教育に関する専門用語集を添付するなど、プログラムの内容が十分理解できるよう心がけた。
 神戸女学院大学では、このプログラムを実施するため、講堂や語学教室に「同時通訳ブース」を設け、実践的なトレーニングの場を提供。すでに、外国人を招いた講演会などで学生の同時通訳が活躍している。GPの補助金は、語学施設や機材の拡充に活用される予定だ。
 大学院には通訳コースを設置して、より高度な会議同時通訳者・司法通訳者の育成にも取り組んでいる。ただし、規模の拡大は考えていないという。「英語力を伸ばしたいという学生はトップレベルまで引き上げますが、キャンパス全体をバイリンガル環境にしたいというわけではありません」(原田学長)。
 通訳プログラムを導入する大学は増加傾向にあり、神戸女学院大学には視察の依頼が相次いでいる。



PAGE 22/25 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse