| Vol.1 公立高校入試 学区の撤廃・緩和で高校の特色化が進む |
| 現在、高校では様々な改革が進んでいる。そのキーワードとして、（1）高校入試 （2）中高連携 （3）高大連携 （4）教育の特色化 （5）学力向上 （6）キャリア教育―の六つが挙げられる。1回目はこのうち（1）の動きについて紹介したい。
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学区の撤廃・緩和で高校の特色化が進む
近年、公立高校における入試改革の特徴の一つに、受験できる地域の範囲を定めた学区の撤廃や緩和が進んだことが挙げられる。
これまでも専門学科については、全県1区にしているところが半分以上を占めていたが、普通科についても
（1）全県1区にする（学区撤廃）
（2）学区数を減らしたり、学区を越えての受験を認めるように条件を緩和する（学区緩和）
など、受験できる高校を増やす県が増えつつある。
ベネッセ教育総研による各都道府県の教育委員会へのアンケート（2004年5月実施）でも「学区の撤廃にとても力を入れてきた」が19.2％、「学区の緩和にとても力を入れてきた」が38.5％と、合わせて6割近くが学区の撤廃や緩和に取り組んだことが分かる。
山梨、宮崎、長崎、広島などでは長い間、「総合選抜制度」（※1）を実施してきた。これは公立高校の序列化や受験競争の過熱を防ぐことが大きな目的だったが、学校ごとの特色が出しにくく、入学後の生徒の学力差も大きいため、すべての生徒の学力を伸ばすには難しい環境になっていた。今回の動きは、このような総合選抜制度の廃止にもつながった。
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| ※1 高校が単独で合否を決定するのではなく、学区全体の定員枠の中で合否を決定。基本的に居住地域に近い高校に振り分けられ入学する
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公立高校の学区撤廃は、東京と和歌山が03年度から実施し、埼玉、福井が04年度から、また05年度からは、秋田、石川も実施の予定である。青森、神奈川、滋賀、広島でも廃止の方向で検討しているようだ。
このような流れは、生徒が自分の興味・関心や適性に合った公立高校を受験できるようにするとともに、高校がより多くの意欲ある生徒を集めることを意図している。中教審の答申を受けて設置された「高等学校教育の改革の推進に関する会議」において、「高校入試の多様化・多元化」と「高校の個性化・多様化」という方向性が92年2月に打ち出され、90年代半ば頃からこの流れは比較的緩やかに進行してきた。しかし近年、流れが加速しつつある。それとともに、従来の「多様な平等性ある選抜」から競争原理による選抜が行われるようになった。少子化が進む中で、公立高校の間でも存続をかけた生徒獲得競争が激化しているためで、今や入試改革の主体が教育委員会から高校自身に移ってきているといえよう。
優秀な生徒を集めるためには、出口の部分についても生徒や保護者にとって魅力的に映るような付加価値を打ち出すことが必要となっている。
前述の教育委員会のアンケートでも、「難関大学への合格者の増加に、今後力を入れていくか」という質問に対して肯定的な回答は、「とても」と「やや」を合わせると約6割を占めている。学区の撤廃・緩和も、公立高校の進学実績を上げるための施策だと受け取れる。
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