ベネッセ教育総合研究所
学生像を知り尽くした手配りで学習支援を強化
武蔵野大学教授
ガイダンス教育研究会
矢内秋生
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遠近法

教育ポテンシャルのある大学が満を持して発展型に挑戦
新しい教育プログラムの実現には、過去の教育実績が必要

 新設・改組する学科のカリキュラムをデザインするには、新任教員を含めた教育スタッフの総合力を客観的に見極めることが重要である。
 ある大学での例である。経済系の学科を改組することになり、現代社会のニーズに合わせて、ケインズ経済学や金融工学などの実践的な領域を基幹科目として新たに取り入れようと考えた。しかし、専任教員には社会主義経済学理論の研究者が多く、新しい分野を担当できる者がほとんどいなかった。そこで、非常勤の教員を補充してそれらの科目を担当してもらわざるを得なくなったという。
 高校教員への説明会で、新しいカリキュラムと教員の顔ぶれを見た高校の進路担当教員がこう言った。「カリキュラムが変わるのは分かりましたが、教授陣は代わったのでしょうか」。近年盛んに行われてきた新設・改組に対する厳しい指摘、皮肉である。
 理想的な教育を追求し、到達目標を定めてカリキュラムをデザインすることは机上でもできる。しかし、そのカリキュラムがその大学で実現可能か、教育の成果が十分に期待できるかどうかは、個々の大学の持っている「教育ポテンシャル」、つまり理想とする教育を提供できる潜在能力と、さらにそれに応えうる基礎学力が学生に備わっているかどうかにかかっている。
 カリキュラムを科目名の羅列と考えれば、いくらでも革命的に変更することができるが、大学の教育力はあくまで継続的なものである。過去の教育実績(土台)がなければ、いくら明確な目標を立てても、新しい教育プログラムを実現することは難しい。


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