ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
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議論の背景と質保証の仕組みの見直し
国際的な動きと規制緩和

 今回の審議で、高等教育の質の保証が重要なテーマとして位置付けられた背景には、国際的通用性を確保する教育の質保証に向けた取り組みが、諸外国で加速している状況がある。99年には、ヨーロッパ域内での学位システムと単位制度に関する共通の枠組みを構築する目的で、29カ国の教育大臣が署名して「ボローニャ宣言」が採択された。域内での流動や就職を促進すべく、比較可能な学位システムを導入し、単位互換制度の確立を図ろうというものだ。
 海外の大学の日本進出の動きがある一方、高校から直接海外の大学を目指す若者が増加するという、高等教育のグローバル化に対する認識も、答申に反映されている。教育面での国際競争力を強化しなければ、日本の大学は埋没してしまうとの危機感が、教育関係者の間で高まっている。競争力強化の前提になるのが、国際的に通用する質の保証だ。
 設置認可制度については、ここ数年で次々と緩和策が打ち出された。大学設置基準の弾力化に加え、手続き面でも簡素化が図られている(図表1)。

図表

 中でも03年の届け出制導入は新増設の一層の活発化につながった。04年度の私立大学の学部・学科新設件数は前年度からほぼ倍増。私立短大も合わせた組織改編の7割程度が届け出によるもので、学科新設は大部分が届け出だった(図表2)。

図表

 04年度、構造改革特区制度の中で株式会社が大学を設置できるようになったことは、高等教育界にさらに大きなインパクトを与えた。
 こうした規制緩和と新増設の動きの中で、「この内容で大学教育といえるのか」「専門学校とどう違うのか」と指摘されるケースも増えている。これが、大学関係者の間に「そもそも大学とは何か」という根本的な問いと、教育の質の崩壊への危機感を生んでいる。
 「例えば現役の実務家で週の半分しか大学に来ない専任教員が、どの程度の帰属意識と教育責任を持てるのか。そういう人が専任教員の大部分を占めるような体制の是非は、議論されるべきだ」。ある関係者はそう指摘する。教育の主力となる「専任教員」について、設置基準にもっと明確に定義すべきとの認識が高まり、答申では「具体的に取り組むべき施策」として、「専任教員の教育研究・管理運営上の責任」の明確化が盛り込まれた。


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