ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
相澤益男
大学設置・学校法人審議会会長
東京工業大学学長
相澤益男
PAGE 19/41 前ページ次ページ


【寄稿】
最低限の水準確保ではなく、世界水準を指向する質保証システムを

高等教育環境が劇的に変化

 高等教育を巡る状況が激しく変化している。我が国の少子高齢化は著しく、2007年には大学進学者数が全国の四年制大学と短期大学の収容者総数に並ぶ。いよいよ「大学全入時代」の到来だ。それにも関わらず、大学の新設・増設が続く。さらに構造改革特区に限定されているとはいえ、遂に株式会社立の大学が出現した。他方、経営破綻に陥った学校法人が解散命令を受けるという異常事態の発生である。
 2004年には、国立大学が法人化された。我が国の高等教育史に残る画期的な改革だ。各国立大学法人における自律的な大学マネジメント改革の進展が注目される。公立大学の法人制度化も進展し、地方自治体との確執が見られるものの、それぞれ特色ある大学に再編されつつある。私立大学の改革は多様であり、建学の精神にもとづいた個性化・特性化が戦略的に展開されている。今や、国公私立大学の数は700を超え、「大学大競争時代」の様相を呈してきた。
 海外に目を向ければ、国際的優位性の獲得を目的として、大学改革を重点的に推進する国が数多い。特に中国、台湾、韓国、タイなどアジア諸国の大学改革は目覚ましい展開だ。最近、学生の国際的な流動化が活発になっていることも注目されよう。日本に留学する外国人学生は11万人を突破し、海外の大学等に留学する日本人学生の数は9万人を超えている。こうした動きに伴って、外国高等教育機関の日本進出や、日本の高等教育機関の海外進出など、積極的な国際協調・連携がダイナミックに行われるようになった。国際的にも大学大競争時代である。
 大学大競争といっても、競い合うのは、いうまでもなく教育・研究の質であり、水準である。高等教育を巡る状況が劇的に変化していることを正しく捉え、高等教育の質を保証するとともに、世界的通用性のある水準に質を向上させるシステムの構築こそ喫緊の課題であることを強調しておきたい。



PAGE 19/41 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse