ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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設置認可制度は堅持すべき

 答申には、「高等教育の質の保証の仕組みとしては、事後評価のみでは十分ではなく、事前・事後の評価の適切な役割分担と協調を確保することが重要である。設置認可制度の位置付けを一層明確化するとともに、認証機関による第三者評価のシステムを充実させるべきである」と明記された。
 規制緩和があまりに急激なため、設置認可について種々の困惑、疑義、課題が提起されるようになった。その多くは、前に述べた通り「大学の質」に関わることであり、「質の低下」につながりかねない。最近、経営悪化に陥る学校法人も現れ始めた。設置申請に虚偽の内容があると判明した不祥事も発覚した。学生の保護は非常に重要な問題であるため、大学経営が、学生の立場を持続的に保証するに十分な安定性と健全性を保持しているか、事前チェックの重要性が改めて認識されるようになった。
 他方、2004年4月には、認証評価制度が導入され、国公私立大学のすべてについて、7年間に一度の機関別認証評価が義務づけられた。文部科学大臣の認証を受けた評価機関が、自ら定める評価基準に従って機関別に評価を実施する。認証評価制度は、大学等の事後評価の中核的な役割を果たす。しかしながら、制度はスタートしたばかりで、事後評価が定着するまでにかなりの時間がかかるであろう。しかも、評価文化が十分に醸成されていない我が国においては、事後評価だけで質を保証することは大変難しいのではないか。
 我が国における「大学の質保証システム」は、文部科学省の「設置認可」と第三者評価機関の「認証評価」が基軸となる制度設計である。設置認可については、たとえ規制緩和がさらに進もうとも、制度そのものは堅持されるべきである。したがって、両者の役割分担を明確にした上で、適切な協調をはかった「質保証システム」とすることが今後の重要な課題である。ただし、質保証の目的が、最低水準の確保にあるのではなく、世界的通用性を指向した質の向上にあることを共通の認識としたい。
 知識基盤社会における大学・大学院の果たすべき使命は重く、社会的な期待は限りなく大きい。設置認可の申請において、個性化・特色化の観点から、各大学は重点的に担う機能と、その機能に関わる教育研究上の具体的な目標を明示すべきである。これらの申請内容は、社会に対する宣言・公約に他ならない。設置認可の審査においては、答申にも記載されているように、申請者との「対話型審査」が有効であろう。



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