ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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安定性が株式会社立の課題

―規制緩和の最大の目玉ともいえる株式会社立の大学については、どう評価されますか。

大南
 株式会社も学校法人も自立を基本的な精神とする組織です。その意味では、株式会社が私立大学と同じ土俵に参入してくること自体には異論はありませんが、いくつかの点で不安も残ります。
 第一に、専門学校との違いが明確ではないことです。設置審では、株式会社立大学の認可に関して、この点が問題になったと聞いています。つまり、学位授与機関としての大学の教育と、職業的な技術や知識を提供する専門学校の教育が、カリキュラム上でどう調和しているかということです。資格取得だけを考えるなら、専門学校組織の方が効果的なわけで、学位授与との整合性が問われているのです。ただ、それを最も敏感に感じ取ることができるのは利害関係者であり受益者である学生です。ですから、株式会社立大学が評価機関などから評価を受ける以前に、今後も初年度と同様に学生が集まるか大きな関心を持っています。
 第二に、存続に関して不安定要素があることです。教育特区に名乗りを上げた自治体が、その後もずっと同じ姿勢でその大学への支援を続けるかどうかには疑問が残ります。例えば株式会社立大学が全国展開された場合、地域限定というメリットがなくなる自治体がどう対応するかは不透明です。
 第三に、企業である以上は利益を上げなければなりません。しかしそのために教員の大多数を非常勤にしたら、誰が実質的に教育責任を負うのかという問題が出ます。株式会社だと、出資者の合意を得ることも課題です。大学経営でどんな利益を生み、それを株主にどれだけ還元できるか説明する責任がありますから、将来的には株主の意向を優先させる必要も出てくるでしょう。
 これらの不安は、いずれも経営の安定性に深く関わるものです。経営の安定と教育研究の充実とは不可分の関係にあり、セットでの改革を実現しなくてはなりません。



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