ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
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設置審との「対話」を振り返る(1)
 中教審答申では、設置認可とそのプロセスが、申請者と設置審との「対話」と位置付けられた。05年度の新設申請をした大学に、申請者側としてこの対話をどう受け止め、評価しているか聞いた。
大阪工業大学大学院知的財産研究科

知財の有識者が意見を提出

 大阪工業大学の知財専門職大学院の設置審査では、2004年度から試行的に導入されている参考人制度が適用された。大学設置・学校法人審議会の大学設置分科会が、特定の審査案件について関連業界などの意見を聞くシステムだ。今回の「知的財産分野の有識者」(大学設置分科会)への参考人委嘱は、大阪工業大学からの要請ではなく分科会の判断で決まった。東京理科大学からも知財専門職大学院の設置が申請されたため、この分野についての一般的意見と両大学院の申請内容に対する意見を求めた。
 知的財産分野の有識者参考人は一般的意見で「知的財産に関わる人材は、弁理士や弁護士以上に産業界での需要が高い」と指摘、大阪工業大学の計画について、「弁理士の養成など資格取得のための教育が主目的のようで、知財経営者育成の観点からは経営関連分野の科目が少ない」との意見を出した。
 しかし石井正研究科長は、この意見は特に大学側には伝えられなかったという。「設置審は、参考人意見の中から設置の基準に関わる部分だけを審議会の意見として出すのでしょう。企業向けの人材育成か弁理士養成かという戦略に関わる点は、大学の判断に任せるという考え方ではないか」とみる。
 実際、大阪工業大学大学院が知財MBAと弁理士養成の2枚看板を打ち出すのは、関西というマーケットの特性を踏まえた経営戦略だという。「この分野での学生集客力は東京の5分の1。しかも、関西ではあいまいな能力は評価されず実利が重視される。出口の選択肢を増やし、資格という客観的な付加価値を明示しないと学生は集まらない」。経営関連の科目が少ないという意見についても、「経営は様々な科目の中で事例を通して学ぶ方が効果的なため、企業出身の教員による法律関連科目で十分対応できる」という考えを説明することなく認められた。
 一方、参考人の意見を受ける形で設置審からただされた社会人学生に対する入学後の配慮については、夜間主コースの設定と土曜日の午前・午後の集中的科目の開講を前面に出すことで、クリアした。



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