ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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背景に学位のニーズの高さ、大学教員による“購入”も

 ディプロマミルの存在は知られていても、数が減少する気配はありません。理由の一つは学位に対するニーズが高いこと、もう一つは規制が難しいことです。ニーズが高いのは、アメリカが学位の有無によって、給料や役職など待遇が変わる学歴社会だからです。ディプロマミルを利用すれば1000〜3000ドル程度で学位を購入でき、それだけ払っても学位が欲しいという人たちがいるわけです。
 例えば、アメリカの大学教員はPh.D(博士号)を持つのが普通ですが、持っていない教員にとってディプロマミルの学位でも魅力的なようです。それ以外の専門的な職業に就く人たちにも博士号の取得者が多く、学位を買うことがあります。また、ディプロマミルの経営者が、自らの権威を高めるために購入する例も多いようです。
 このような確信犯的な学位購入者のほか、正規の大学だと信じてだまされる被害者も数多くいます。納入費用の返還を求める訴訟も起きていますが、オンライン大学の場合、実体の把握は難しく、経営者の責任追及までにはなかなか至らないようです。
 規制や取り締まりを強化しようという動きもあります。オレゴン州では、怪しい機関のリストを作ってウェブで注意を呼びかけていますが、あまり効果を上げていません。米会計検査局が2004年5月に行った調査では、連邦政府から支給された奨学金で学位を取得した職員のうち、1割以上がディプロマミルからのもので、その総額は150万ドルを超えることが判明しました。これを受けて教育省は、正規のアクレディテーション団体が認定している高等教育機関のリストを05年2月に作りましたが、きちんとした教育をしながらアクレディテーションを受けていない大学からは反論もあるようです。そもそも、ディプロマミルそのものは違法行為というわけではないため、法的根拠をもとに規制することが困難なのです。



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