ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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認証評価の実効性は未知数、大学自らの努力で質の保証を

 教育の質の確保という点で、日本の大学は大きな課題を抱えています。一つは、これまで教育の質を維持してきた入試が機能しなくなったこと。学力検査によって大学教育を受けられる水準に達している学生を集め、そこから教育をスタートすることで一定の質を維持してきたのですが、現状では全体の約5割の学生は推薦入試で入学しています。
 基礎知識が身に付いていないために、大学での最初の1年間は補習教育に費やされています。4年次は就職活動に当てられるため、まともな教育は2年間しかできません。しかも、大学には学習指導要領のような基準はなく、すべて大学や教員の自主性に任されています。
 基準が緩和されて設置段階で質を保証する仕組みが崩れ、入試による質の維持も困難になると、残るのは認証評価だけということになりますが、これはまだ始まったばかりで効果がはっきりしません。設置認可は文科省の仕事で、認証評価を行うのはそれ以外の団体です。仮に一度認可された大学を評価機関がダメだといえば、文科省の威信が低下することになりかねません。現段階では、教育の質を保証する仕組みとしてうまく機能するかどうかは、疑わしいと考える方が良さそうです。
 そうなると、質の保証は個々の大学の努力に全面的に負うことになります。大学教育では、学生にどれだけの付加価値を付けられるかが問われ、その仕組みをどれだけ持てるかが、質を保証することになるのです。ただ、付加価値は一律に決まるものではなく、各大学のミッションに応じて設定されるべきです。
 大学が最も恐れるのは、少子化の中で学生が集まらなくなることです。市場原理の中で安易な学生集めに走るか、使命を自覚し付加価値の高い学生を育て市場の期待に応えるか、各大学の自覚にかかっていると思います。



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