ベネッセ教育総合研究所
教育力の時代
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柔軟なテーマで製作を課し、発想力を鍛える授業も

 「学生は、専門知識さえあれば新しい製品が開発できると考えがちですが、実際はそうではない。知識を発揮するために必要とされる能力があるのです」。塚本教授は、その柱に日本語による表現力と発想力を位置付ける。いくら良いアイデアがあっても、上司にうまくアピールできなければ採用はされない。一方、アピールする力があっても、新しい製品を創造できなければ意味はない。そこで「技術文章学」での成果を土台に、塚本教授が98年度からスタートさせたのが発想力育成を目的とした「創成プロジェクト」(図表)だ。機械工学科の2年次前期の必修の専門科目に位置付け、演習、実習を主体に週2コマ、180分連続で実施する。

図表

 天性のものと思われがちな発想力を、ある程度ノウハウとして身に付けさせるという狙いが、この授業の特徴だ。教科書はやはり塚本教授が自ら作成し、日本機械学会教育賞を受賞した。例えば「思考実験による発想準備」についての授業では、隣の電車が発車すると自分の乗っている電車が発車したような錯覚を起こすのはなぜかを考えさせ、目に見えるもの(=既成概念)にとらわれず発想することの重要性を認識させる。そして物事を構成する要素に着目し、それを変化させることで新しい発想を生み出す「メカニカル発想法」を学ばせる。
 さらに、この発想法を実地で習得させるために演習などのトレーニングを繰り返す。「小惑星からエネルギーを得るアイデアを出しなさい」「世の中に出ていないまったく新しい製品を創造しなさい」といったテーマを次々と与え、ディスカッションやブレーンストーミングをさせる。そして考えついたアイデアをOHP1枚のシートを用いて、全員に3分間のプレゼンテーションをさせる。発想力に加えて、表現力も同時に育成する狙いだ。
 後半には4、5人ずつのグループを組ませ、「ストローの斜塔」や「跳ねる機械」というユニークなテーマ設定で製作させる。作品について全員の前でプレゼンテーションし、優秀な作品には賞も与えられる。例えば「跳ねる機械」では、跳ねるものなら形、機能は問わない。評価するポイントは「面白さや意外性」で、制限がほとんどない分、発想力が問われる。学生は1人2500円という予算の範囲内で材料を調達する。「学生へのアンケートでも、この授業は人気が高く楽しんで受講しているようです」と、塚本教授は言う。


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