ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる個人情報の保護と活用法
 
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大学の意識は二極分化へ

 こうした状況に対して、学校法人はどのような意識をもっているのか。岩田氏は「規模の大小や伝統校か否かに関係なく、個人情報保護に積極的な対策を打ち出していこうとする大学と、まったく危機感のない大学の二極分化が進んでいる」という。エデュースには、学校設置者に対して情報セキュリティ強化のワークショップを開催したり、コンサルティングと対応策の提案をセットにした「100日実行プラン」という商品がある。二極分化という指摘は、そこでの五十数校の現状調査や教職員研修会の実施を踏まえたものだ。
 大学によっては、個人情報を扱う部署や担当者が、それまでの経験や明文化されていないルールを継承する形で業務に従事している実態がある。教職員研修会などで、個人情報についての意識チェックを行うと、個人情報に日常的に接している人とそうでない人の差が、顕著にあらわれるという。しかし岩田氏は、「こうした状況は、比喩的にいえば『焼き鳥屋の秘伝のタレ』。個人の能力に頼るのではなく、組織全体のナレッジにしていかなければ、大学の個人情報保護の取り組みは前に進まない」と指摘する。
 また、最近は大学全体としての取り組みは始まっていなくても、その推進に向けた研修会などの実施を望む声が高いという。ただ、研修会に部課長だけを参加させる大学があれば、警備員も含む全職員を参加させる大学もあり、温度差があるのは事実。「新法が施行されたのだから、理事長・役員クラスにはできるだけ参加してもらい、一気に進めてくれることを期待しているのですが……」。
 大学改革においては、トップの問題意識の有無がカギとなることが多いが、個人情報保護に関しては特にその点が問われる。多くの部署があり、それぞれに膨大な情報を保有している状況で保護の徹底を図ろうとすれば、おのずとトップの関与が必要になるからだ。トップを動かすにはどうすればいいのか。岩田氏は「情報が漏洩した場合の損害額を算出して可視化したり、罰則について触れるなど、現実感を伴ったアピールが有効」という。



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