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国立大学財務・経営センター研究部教授
講師●丸山 文裕
1951年生まれ。81年名古屋大学大学院教育学研究科修了。83年ミシガン州立大学大学院修了、Ph.D。広島大学大学教育研究センター助手、椙山女学園大学人間関係学部教授を経て02年から現職。専門は高等教育論、教育経済学。著書に『私立大学の財務と進学者』(東信堂、99年)、『私立大学の経営と教育』(東信堂、02年)など。 |
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第1回 ファンディング・システムの変化について理解し、備えよう |
健全な財政の下での持続的・安定的な経営は、大学の社会的責務と考えられるようになっています。この誌上セミナーでは、大学経営に影響を及ぼす社会動向や制度について解説し、大学財政に関わる内外の最新情報を紹介することで、戦略立案の新たな視点を提供します。初回は、わが国の高等教育のファンディング・システムがどんな方向へシフトしつつあるのか、考えてみましょう。
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1 競争的資金配分へのシフトを明示
中央教育審議会は、2005年1月に答申「わが国の高等教育の将来像」を発表しました。これは今後の日本の高等教育の行方に大きな影響力を持つ答申です。全体の内容や解説は、本誌をはじめとする高等教育関係誌で論じられていますので、ここでは高等教育の財政面に絞って言及したいと思います。
財政については、答申第4章の「1.高等教育の発展を目指した支援の在り方」に示されています。そこでは、「機関補助と個人補助の適切なバランス、基盤的経費助成と競争的資源配分を有効に組み合わせることにより、多元的できめ細やかなファンディング・システム」が必要であると強調されています。より具体的にいうと、「国立大学の政策的課題の取組に各大学の個性、特色に応じて支援する」「私立大学の基盤経費助成は、各大学の個性、特色を考慮する」「国公私を通じて競争的・重点的支援の拡充」「学生支援の充実」といった記述です。
ここではっきり示されているのは、高等教育財政が、今後ますます競争的、重点的資源配分と個人補助にシフトされることです。今後ますますと言ったのは、こうした財政政策はすでに始まっているからです。このことは、大学の運営や教育・研究に携わっている読者の皆さんがそれぞれの現場で身をもって感じていることと思います。以下では、このような高等教育財政の方向が、社会や個々の大学にとって、どのような意味を持つかを考えたいと思います。
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