学生による学生の支援活動

　アメリカの大学では、様々な活動において学生が学生を積極的に支援している。その事例をいくつか紹介してみたい。
　一つは、多くのコミュニティ・カレッジの学習支援センターで実施されている「チューター制度」である。
　カリフォルニア州のパサデナ・シティカレッジでは、学習を進めていく上で困難に直面している学生を支援する「学習支援センター」を設置している。学習支援センターは、数学や化学の授業に困難を感じる学生への支援制度として、学生によるチューター制度を取り入れている。チューターになる学生は自主的に学習支援センターに登録後、補習を受ける学生との間でスケジュールを調整した上で、週に何時間かの学習支援を行う。チューター学生は「チューター料」として報酬を受け取る。
　このようなシステムは他の多くのコミュニティ・カレッジでも導入されている。補習を受ける学生の方の年齢が高い場合もあるが、それほど抵抗感もなく、教師よりも身近な存在であるという理由で好評のようだ。日本で学生が家庭教師を雇い、場合によっては、それが同じ大学の下級生であるという状況を想像していただければわかりやすいだろう。
　学生による学生の支援の中で最もポピュラーな形は、導入教育や１年次教育などで取り入れられている「ピアリーダー」だ。この１年次教育のパイオニアというべき存在が、南カロライナ大学コロンビア校である。南カロライナ大学では、30年以上も前の1972年に、新入生を対象とした「１年次支援プログラム」をスタート。「ユニバーシティ101」という科目を運営するほか、１年次教育研究センター（National Resource Center for the First-year Experience & Students in Transition）を設置し、重要な移行期にある学生に関する研究、教育プログラムの開発・調査、情報提供を行ってきた。
　「ユニバーシティ101」は、新入生が高校から大学という新しい学習環境に移行できるようサポートするオリエンテーション教育だ。学習スキルや社会生活スキルの獲得、大学の理念の理解など、多様な内容で構成されている。この授業の中で重要な役割を果たすのが、授業内外での指導や助言をするピアリーダーと呼ばれる上級生である。授業では、ディスカッションのリーダー役を務めたり、レポート作成の指導をしたりする。以前に「ユニバーシティ101」を履修して優秀な成績を修めた学生がピアリーダーに選ばれる。多くは４年生である。