在学生が企画運営する入学式
仁愛大学

　仁愛大学では2001年度の開学当初から、「学生と一緒に大学をつくっていこう」という方針を打ち出してきた。金田明彦人間学部コミュニケーション学科長によれば、「基本的な考え方は、参加ではなく『参画』。学生を企画段階から関わらせることで、大学運営の主体としての役割を担ってもらいたい」という。その最初のプロジェクトが02年度の入学式だった。
　02年２月頃、金田学科長の呼びかけで一期生20〜30人が集まり、企画を練った。例えば、入学式のテーマに合わせた映像で出迎える、先輩や教員のメッセージを盛り込んだオリジナルビデオを会場で流す……。その後は案内、誘導、受付、映像、ステージ、広報・記録など担当グループごとに準備を進め、当日は新入生の受付から来賓の案内まで、運営のすべてを学生が主導。教職員は補助に徹した。新入生からも好評で、大成功に終わった。
　入学式は大学の正式な行事であるため、その内容は教職員で構成する入学式企画委員会など正規の議決機関で最終的に決められる。そこに学生の代表も出席して、自分たちの企画を原案として提出。委員会で実行可能性を審議した上で正式決定されるという流れだ。原案提出前に行われる学生の企画会議には、金田学科長や広報課の職員がオブザーバーとして参加している。
　学生はプロジェクト方式で活動する。入学式の企画運営など明確な目的を掲げてメンバーを募り、目的を達成したら、報告書を提出して解散する。金田学科長は、「プロジェクトに期間を設けることで、サークル活動とは違うある種の厳しさが出る。メンバーが固定されないため、その活動に刺激されたほかの学生も参加しやすくなる」と、メリットを説明する。
　参加スタッフは学内のポスターを通じて募集。メンバーが集まると、まずはプロデューサーを決定し、役割に応じて数人のディレクターを選び、その下にクルーと呼ばれる学生を配置する。プロデューサーはディレクター会議を頻繁に招集し、進行状況などを把握しておく。担当ごとにブログ（ｗｅｂ日記）を立ち上げて会議の議事録を常にアップすることで、メンバー全員が情報を共有できるようにしている。
　学生プロジェクトでは、多数決による意思決定を禁止している。異なる意見を調整し、全員の協議によって着地点を見いだすためだ。プロデューサーやディレクターは自薦が原則。「これはコミュニケーション学科の基本コンセプト『コミュニケーションデザイン』の考え方に沿ったルール。前向きで円滑なコミュニケーションを通して、プロジェクトの目的を達成していく能力を身に付けさせたい」と金田学科長。
　その後も毎年、入学式プロジェクトは継続している。「学生の自主性がほかの学生の自主性を引き出し、いい循環を生んでいる」という。