文学部には明治以来、“哲・史・文”、すなわち哲学・史学・文学の三つの分野を柱にした学科が置かれてきた。哲学分野には教育学、心理学、社会学などの学科があり、史学には日本史、東洋史、西洋史、考古学など、文学には国文学（日本文学）、英米文学、ドイツ文学、フランス文学、中国文学などの学科がある。これら独立性の高い多くの学科が並存するというのが、文学部の一般的な姿だったといえる。
　ところが、社会の変化に伴ってそれぞれの学問分野で扱う領域が拡大し、従来の学科の枠を超える研究が盛んに行われるようになった。例えば教育学や心理学では、もはや哲学という狭い枠組みにとどまらず、社会科学や自然科学の領域も取り込んだ総合的・学際的な研究が進められている。史学や文学の分野では、各国・地域の思想や文化の特色を把握し、異なる文化背景を持つ民族同士の交流の促進に役立てようという発想が生まれている。創作を志して文学部に入る学生の中には、従来の小説やエッセイなど文学作品だけでなく、演劇、映像の分野を志向する者も増えている。
　このように、学問領域の拡大、学習ニーズの多様化によって、従来の哲・史・文の３領域で括ることがもはや時代の要請に合わず、むしろ学問の進展や新たな研究テーマの発掘を阻害するという声が上がるようになったのである。
　このような考え方に立った近年の文学部改革には、大きく分けて次のようなパターンがある。いずれも、従来の学科縦割りの教育・研究を排し、分野横断型の柔軟なシステムへの転換を目指している。

（1）１学科多専修方式…学科を人文社会学科や総合人文学科など一つにまとめ、その中に文学、史学、教育学、心理学などの多様な専修や専攻を置く。入試は学科一括募集とし、１年次は専修を選ぶための導入教育を行い、２年次から専修に分かれるシステムを採る大学が多い。

（2）少数学科多専修方式…既存学科を哲学・思想系、史学系、文学・語学系など系統ごとに大括りにして、従来の学科を再編成し、専修や専攻として置く。

（3）副専攻方式…ほかの学部でも急速に増えているシステムで、主専攻以外に、もう一つ専攻を決めて学ぶ。「ダブルメジャー」とも呼ばれる。一つは、自分の所属以外の学科の中から副専攻を選ぶパターン。もう一つ、学科間の学際的領域を副専攻用のコースとして設けるパターンがある。