全学年一斉に１学科に統合

　関西大学文学部は、2004年度にそれまであった８学科を「総合人文学科」の１学科にまとめ、10専修を置くダイナミックな改革を行った。８学科がそのまま移行した８専修に加え、学際的なテーマを扱う「インターディパートメント」と、スポーツ文化を総合科学的な視点で学ぶ「身体運動文化」という、新たな専修を設けた。入試は学部一括募集で、２年次から各専修に分属する。
　中心となって改組を推し進めた文学部長の芝井敬司教授は、開口一番、「今回の改革は、本気の改革だと自負している」と語った。「その理由は三つ。第一は、実質的な人事決定権を学科から学部に移したこと。第二は、１学科10専修制を04年度の入学生だけではなく、一気に全学年に適用したこと。そして第三は、この改組は終点ではなく、その後も継続的に改革に取り組んでいること」。
　これまで文学部では、退職する教員が出た場合、その学科に同分野の教員をそのまま補充するというのが慣例になっていた。これを文学部全体として最も必要なところに、必要な人材を配置するシステムにし、採用はすべて公募で決めることにした。「つまり、必要に応じて新たに専修をつくるなど、文学部の改革に必要なポストに人を充てようということ。教員に欠員が出た場合でも、後任人事を行うという発想自体をなくした」。
　新システムを全学年に一斉に適用したのは、さらなる改革をスムーズに進行させるためだという。実は、文学部では今回の改組を検討するに当たって、この後詳しく説明する次の段階の改革も考えていた。04年度の入学生だけが新しいシステムの中で学ぶことにしたのでは、次のステップに進むのを完成年度の08年度まで待たなければならない。そう考えての思い切った第一歩だったのだ。
　大学教員は一般的に、自分の専門分野の独立性にこだわりがちだ。学科が他の分野と統合されることに抵抗はなかったのだろうか。芝井学部長は、「どの教員も協力的だった」と言う。「01年に将来構想委員会で今回の改革案をまとめたが、その時の委員長が私だった。その後、学部長に選ばれたのは、学部の将来のために改革案に賛同し、協力しようという教員が多かったからだと思う」。

専修以外の卒論選択も

　芝井教授の言葉通り、関西大学文学部は05年度に「テーマ・プロジェクト教育」という新しい教育システムを導入、06年度から五つの新専修の立ち上げも決定するなど、改革に継続的に取り組んでいる。その根底にあるのは、「多彩なディシプリン（学問分野）と活発なプロジェクトによる新しい人文学の拠点を目指す」というコンセプトだ。
　テーマ・プロジェクト教育では、学際的分野や先駆的分野で、複数のテーマを設定。３年次から４年次にかけて希望者が興味あるテーマを選択履修し、卒業論文は専修の分野ではなくこちらのテーマで書く。05年度は「アメリカ文化研究」「フィールドワークとしての芸術学」「フランス映像文化論」「文化遺産学」「アジアの民俗宗教学」「地域実践心理学」の６テーマを設定。各テーマを担当する教員は全員、公募で選んだ。
　「テーマ・プロジェクトでは、現代的に意味のあるテーマをスポット的に設けていく。学問としての鮮度を重視するため、原則として２年間に限定し、担当教員が延長を希望する場合は、継続申請を出してもらうことにしている。」

学部共通科目で導入教育

　２年次からの専修所属に向け、１年次では橋渡しとなる学部共通専門科目を履修する。「学びの扉」と「知へのパスポート」は、各専修の研究テーマや授業内容を把握するための導入的な科目である。前者は各専修で学ぶ内容についてリレー式で講義する。後者は演習形式で各専修から提供される授業の中から関心のあるものを選択受講し、自分の専修を絞り込む。すでに決めている学生にとっては、専門分野の基礎を学ぶ授業になる。「知のナヴィゲーター」という学部共通専門科目では、研究テーマの設定、資料の検索、レポートのまとめ方、発表や討論の方法など、全専修で共通して求められるスキルを、セミナー形式で身に付ける。
　各専修の教員は、これらの共通科目を通して自分たちの分野に関心を持ってもらい、選択してもらえるよう、真剣に学生に向き合っているという。それが教育の内容や方法の改善につながっているようだ。