産学官民で進める学生発案の地域活性化

　関西学院大学は、全学規模の教育プログラムの中で、近郊の宝塚市と連携した地域再生に取り組んでいる。「学生による『劇場空間・宝塚』の都市再生」と名付けられたこのプログラムは、2004年度の現代ＧＰにも採択された。
　きっかけは、03年10月に内閣府の「全国都市再生モデル調査」に採択された宝塚市が、関西学院大学に再生モデルの作成を委託したことだった。学生にまちづくりのアイデアを出してもらい、それを行政や市民が評価した上で、実現可能なものから実行に移していくことにした。学生は27の再生プランを提案。新鮮な視点が行政や市民に大きなインパクトを与え、04年２月に宝塚市と包括的な連携協定を締結した。この連携が教育にも大きな効果があることがわかり、全学的な教育プログラムへと発展した。
　「学生による『劇場空間・宝塚』の都市再生」プログラムの開発で中心的な役割を果たした商学部助教授の木本圭一学長補佐は、「学生は現場で、市民はもちろん行政や企業の人たちとまちづくりの活動をすることで成長する」と語る。 　関西学院大学は、現代ＧＰ採択を受け、宝塚市に地域連携センターを設立。まちづくり、高度福祉、新産業創成、宝塚歌劇研究／宝塚地域研究の４分野を設定し、産学官に市民を加えた産学官民によるプロジェクトを進めている。
　まちづくりプロジェクトでは、都市再生モデル調査で提案された27案のうち、市民からの評価が高く、実現可能性が高い６件の実現に向けて取り組む。「足湯による散策」「イルミネーションを活用した活性化」「河川敷の有効活用」などが選ばれた。
　高度福祉プロジェクトでは、急速に住宅都市化する宝塚市の課題である福祉施設の整備を進める。高齢者福祉に加え、女性が働きやすい環境づくりや子育て支援も視野に入れている。
　新産業創成プロジェクトでは、学生や市民がベンチャーなどを起こすときの、大学や行政による支援の仕組みを考える。
　宝塚歌劇研究／宝塚地域研究プロジェクトは、全国的に有名な宝塚歌劇とそれを育んだ宝塚という地域を学問的に研究し、全プロジェクトのベースとなる同地域の魅力を追求するものだ。
　これらのプロジェクトを正式な教育活動と位置付けるため、関西学院大学では、全学部の２年生以上を対象に「地域フィールドワーク（宝塚）」「タカラヅカ学」の二つの選択科目を開講。プロジェクトに参加する学生は、毎週土曜日に通年開講される「地域フィールドワーク（宝塚）」を履修する。参加学生は現在約100人だが、単位認定を希望しない学生もいるため、授業登録をしているのは63人。
　一方、「タカラヅカ学」は、宝塚歌劇の関係者や行政の代表などが講師を務める。オムニバス形式の連携講座で、地域学の性格を持つ。現在約257人が受講している