特集 「地域」という教科書

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【現場レポート 5】
キーワード 地元企業との協力

中小企業とともに技術者を育成

大阪産業大学

ものづくりの感動を体験

 大阪産業大学は、地元企業との連携に力を入れている。事務局長を務める中山英明常務理事は、「共同研究などを通じ外部資金を導入するだけでなく、連携をどう教育的成果につなげていくかが重要」と指摘する。大阪産業大学の教育目標は、知識と実務能力を兼ね備えた産業人を育成することである。「産業界から求められている人材や能力などのニーズを教員がつかみ、それに沿った教育をする必要がある。そのために、企業との連携は欠かせない」。
 近年は、工学技術を学ぶ動機付けとなるものづくりの感動や喜びを味わったことのない学生が多く、教育上大きな課題になっているという。解決方法を模索する中で、学生が直接生産現場と関わることができないかと考え、1998年から地元企業の協力を得て「ものづくり・アイデアコンテスト」などを始めた。
 開催に向けて、教員と学生で構成する運営委員会がテーマを決め、全学生に参加を呼びかける。学生はチームを組み、「ものづくりコンテスト」では新しい製品やそれを実現する技術を、「アイデアコンテスト」では製品化に向けたアイデアを競う。中山常務理事によると、「コンテストを通じてものづくりの面白さを経験した学生は、学習に取り組む姿勢が変わる」と言う。
 地元企業はコンテストに審査員を送るほか、部品の提供や技術指導などの形で協力する。例えば、旧型車のレストア(復元・再生)を行うチームの学生は、工場に出向いて板金技術を学んでいる。
 コンテストに向けた学生の活動を支えるのが、「クリエイトセンター」内に置かれた「MONO工房」だ。旋盤、溶接機、ボール盤、CADなどの本格的工具が揃い、出品作品の製作の場となる。アドバイザー(教員)やグリーンキャップ(先輩学生の指導者)が常駐し、指導にあたる。
 コンテストに参加しない学生も、ものづくりに関心があれば、個人でもグループでも、学年や学科を問わず受け入れる。利用するのは主に工学部の学生だが、経営学部や経済学部の学生も含め、製作中の作品について意見交換する場として「IDEAショップ」もある。
 MONO工房で生まれたソーラーカー、電気自動車、電動バイク、省エネカーなどは、アテネオリンピックのプレイベントをはじめとする各種大会で好成績を収め、学生の励みになっている。


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