特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【現場レポート】埼玉医科大学

「資格」と「職位」を分離し職務権限の分散を図る

若手教員が責任者になる可能性も

 埼玉医科大学は2006年度、教員組織を変更する。教育における学部・学科とは別に、呼吸器、循環器、消化器などの診療科目ごとに、教員の所属単位として「基本学科」を設ける。この基本学科ごとに、教育、研究、診療の三つの領域の担当者を置き、各教員の職務と権限を明確にする。それぞれの教員が希望する業務に力を入れる体制を整え、同時に医局講座制の下で教授に集中していた権限を分散させる狙いがある。
 新組織では、「資格」と「職位」によって、教員の職務内容と権限が決まる。資格は、研究や技術のレベルによって決まり、教授、助教授、講師、助手(07年度からは、助教授は「准教授」、助手は「助教」とする)の4種類に統一した。職位は役職を示すもので、教育、研究、診療の各領域に、主任、副主任などを置く(図表)。これらとは別に、基本学科内の取りまとめ、大学側の意向の伝達などを担当する運営責任者を置く。

図表

 一人の教員が、教育、研究、診療の各領域に関わり、職位は領域によって異なる。教育主任を務める教員が、研究では副主任、診療では専門医員というように、領域によって職務の内容や責任の重さが異なる。現在は、各講座の主任教授が、教育主任、研究主任、診療科長を兼務する形となっているが、今後は権限を分散させる。講師など若手教員が領域の責任者になることもあり得る。
 山内俊雄学長は、「教員の能力は多様なので、教育、研究、診療のうち、その人が得意とする領域で能力を発揮してもらいたい。権限を分散させることで、組織の活性化にもつなげたい」と説明する。
 各教員が主にどの領域を担当するかは、基本的に本人の希望を尊重して決定する。特定の領域に偏りが生じた場合、適性や経験を判断材料に、基本学科内での話し合いによって決める。主任などの職位は領域内で、運営責任者は学科内で、それぞれ話し合って適任者を推薦し、教員人事委員会が判断する。
 いずれも2年間の任期制で、任期満了後は教員人事委員会の評価を受ける。再任は妨げないが、業務遂行能力に欠けると判断すれば交代させる。
 権限は、原則として職位に応じて与えられる。教育に関する権限は教育主任にあるため、講師がこれに任命された場合、教授であっても教育についてはその決定に従わなくてはいけない。研究や診療についても同様で、これまで教授が一手に握っていた権限が領域の責任者に委譲されるわけだ。
 教授が所属単位を代表する地位ではなくなるため、教授会の仕組みも見直す。教授会に代わって決定権を持つ組織として、教員代表者会議を置く。その下に、教員組織運営会議を設置する予定だ。構成メンバーの選定や規定を含めて、詳細は今後検討する。


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