横断型カリキュラム編成で若手教員の判断を重視

　日本大学医学部は、医局講座を横断する形でカリキュラムを編成している。臓器や疾患ごとに総合的な治療方法を教え、教育効果を上げることが目的だ。
　堀江孝至学部長は、「医師に必要な知識や技能をどう身に付けさせるか考えた結果、講座単位ではなく、講座を横断する形で教育プログラムを組む必要があるとの結論に至った」と説明する。
　日本大学医学部では、1989年頃からカリキュラムの再編に着手。10年程度かけて、呼吸器、循環器など臓器ごと、あるいはがん、心筋梗塞など疾患ごとのブロック別カリキュラムを編成する形態へ移行した。
　医学教育では一般的に、例えば呼吸器を扱う場合、呼吸器内科、外科、放射線科、病理学、生理学、解剖学などの各講座が、個別の体系の中で教えていた。内容が重複している場合も多く、教育効果や効率の面で問題を抱えていた。日本大学医学部ではこれらを一つのブロックにまとめ、教育内容を整理した。
　助教授や専任講師など若手教員から選ばれた「モデレーター」が、医局講座間の調整などで重要な役割を果たしている。モデレーターは、ブロックごとに置かれ、カリキュラム編成、試験実施、成績評価の三つの業務を担当する。 　カリキュラムの編成では、どの医局講座にどの部分を担当してもらうかを決定し、授業内容や担当教員の決定など具体的な内容にも関わる。試験では、出題数や配点を決めた上で、各授業担当者に問題作成を依頼し、内容をチェックする。

　 このシステムの導入について堀江学部長は、「調整を専門に行う人材がいることで、科目としてのバランスや医局講座間の教員のバランスがとりやすくなる。医療の変化に対応しやすく、新しい試みへの挑戦も可能だ」と言う。治療法の開発状況などに応じて、最適なトピックスを組み入れたカリキュラムを編成するなど、講座の枠を超えた運営の要としての活動が期待されている。
　モデレーターは、小委員会が候補者を選出し、所属する医局講座主任の承認を得た後、学務委員会の推薦を経て学部長が任命する。選出の基準は特に設けていない。医局講座間の多様な見解を調整しながら、新しい医療技術に対応したカリキュラムを編成するには、若手教員の柔軟な発想が必要と判断した。
　カリキュラムの決定権は形式上学務委員会にあるが、学部長が任命したモデレーターの判断に、関係する講座の教授が異議を唱えるケースはほとんどないという。カリキュラムは、実質的には若手教員の判断の下で編成されているといえそうだ。