特集 「学士課程教育」の構築

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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揺らぐ「専門」の比重

 カリキュラムの見直しは、教養教育の改革を柱に据えて議論されることが多い。しかし、「教養教育と専門教育を別々の体系として捉える従来の発想にとどまる限り、教養教育は変えられないし、大学教育全体としても改善の方向に進まない」という問題提起が、しばしばなされるようになった。
 進学率の向上、学生の意識と学力の多様化、専門学校の台頭、専門職大学院制度の創設など、「大学(学士課程)とは何か」を問う環境は、大きく変化した。職業資格に直結する分野は別としても、多くの大学・学部・学科では、「専門」の意味合いや比重が変化し、揺らいでいる。4年間で豊かな教養を身に付けさせることに力を注ぎ、「専門」も教養の軸として位置付ける、という選択肢があってもいいはずだ。
 突き詰めれば、教養教育と専門教育の総体として、4年間の教育プログラムをどう組み立て、どんな人材を送り出すかという発想に行き着く。
 本特集でも、教養教育の重要性の再確認を出発点にする。そこから先のカリキュラム改革の方向性、具体的な方法論については、可能な限り、トータルな学士課程教育という観点からのアプローチを試みる。
 まずは、学士課程における幅広い教養教育、現代的な教養教育の必要性について、教育者・研究者と企業人それぞれの立場から論じてもらう。その上で、「新たな教養教育」を掲げて近年増えつつある「国際教養系」の大学・学部を、学士課程教育の一つの方向性として取り上げる。これらは、専門教育を相対化して考える材料になる。
 一方で、伝統的な専門分野で、教養教育と専門教育の新しい関係の在り方を意識した改組やカリキュラム改革の事例を紹介。最後に、文字通り「学部教育から学士課程教育へ」を掲げ、カリキュラム改革に乗り出した総合大学に、背景と現状を報告してもらう。
 全体を通して浮かび上がるのは、高等教育のユニバーサル化に伴う「現実と限界」を真摯に受け止めつつ、大学や学部の理念に立ち返り、社会が求める人材像と教育との調和点を見いだすプロセスの重要性である。


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