誌上セミナー　大学の財政と経営

　いうまでもありませんが、私立大学の経営を取り巻く環境には、厳しいものがあります。人口動態の変化で、18歳人口は、1992年度のピーク時から04年度までに64万人減少しました。その間の大学・短大入学者は、30万人ほど少なくなってもおかしくありませんでしたが、実際には10万人しか減少していません。背景には進学率の上昇があり、これは大学側の努力の結果と考えることができます。
　多くの大学が積極的に学生募集に取り組み、入試方法に手を加えました。学生が魅力を感じない学部・学科を再編したり、短大を４年制に昇格させたりしながら、アピールしてきました。その結果、数の上では大学入学者は減らず、大学・短大入学者数の減少のほとんどは短大での減少によるものです。
　今後、18歳人口はさらに約23万人減りますから、大学の努力がますます求められます。大学・短大志願率は過去６年間ほど56％と一定しています。日本の私学の財源は学生納付金に依存しているので、経営安定のためには、進学率をさらに上昇させるしかありません。
　現在では、定員増も学費値上げも簡単ではないので、学生納付金収入の増加は困難です。１大学あたりの補助金も、ここ数年減少し続けています。支出面では、人件費がどの大学でも減っていく傾向にありますが、教育研究経費と管理経費は上昇しています。（図表１）に見るように、私大では支出の減少よりも収入の減少が大きくなっている状態です。