特集 志望校はこう選ばれている

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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職業知識が乏しく将来と結び付けられない

 早期に学部・学科研究をする理由の一つには、1年次に文理選択をさせるという教育課程上の事情がある。今回調査した敬愛大学八日市場高校、京都市立堀川高校、岡山県立岡山朝日高校などでは、1年次に、2年次で履修する選択科目を決める。ここで選んだ科目は、受験科目になるかもしれない。そのため、学部・学科研究を通して、自分が何を学びたいのか考えさせようというわけだ。
 二つ目の理由として、以前にも増して生徒の職業観が未熟だという点がある。今回話を聞いた教員からは、「今の高校生の職業観は非常に狭い」(千葉県立千葉東高校)、「知っている職業が少ない。卒業までに40〜50の職業を言えるように指導している」(大阪府立八尾翠翔高校)などの声が聞かれた。京都市立堀川高校は、「就きたい職業から自分の将来を考えるということは、様々な職業を知らない時期の生徒には難しい」と指摘する。
 「高等学校の進路指導に関する意識調査2004」(ベネッセ教育研究開発センター)によると、「希望する職業の知識を持っている」「最近の産業・職業の知識を持っている」とする生徒は、1997年の調査と比較して5ポイントほど減少。「持っていない」とする生徒が10ポイントほど増えており、職業に関する知識不足を指摘している。
 職業に関する知識が乏しい高校生にとっては、職業レベルではない「やりたいこと」を思い描くことが重要になっている。京都市立堀川高校では、「進路選択の上で譲れないもの」を育てながら、学部・学科、大学について考えさせる。将来やりたいこととそれが実現できる大学とのマッチングが、進路指導の流れになりつつあるようだ。
 一方、石川県立金沢泉丘高校では、1年次の5月に志望校を書かせる。大学名を書くという行為を考えるきっかけにして、大学について具体的にイメージさせることが狙いだという。


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