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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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社会貢献につながらず、待遇が悪いとのイメージ

 なぜ、工学部が選ばれなくなっているのか。
 要因の一つとして、高校教員や予備校関係者がよく指摘する問題が、工学部が扱う範囲の拡大に伴う分野の細分化だ。ある学科と別の学科の違いが理解しにくく、選ぶのが難しいという現状があるようだ。
 受験生の資格志向が高まる中、資格と結び付かないというイメージがある、というのも工学部の弱点だろう。実際に取得できる資格は多いが、高校生にとって仕事との関係がイメージしやすいものではない。
 JABEE(日本技術者教育認定機構)認定プログラム修了者は、工学関係の資格の中でも難関とされる技術士国家試験の1次試験が免除される。JABEEについては、そのことと併せ、修了自体に「国際標準」という価値があることを、今以上にアピールする余地があるのではないか。
 工学部の出口として想定される職業についても、他学部のそれと比べ、受験生にとってイメージが希薄であったり、ネガティブなイメージを持っていたり、という現状がある。バブル崩壊後、大手メーカーが採用を控えたり、生産拠点を海外に移したり、という動きがメディアで盛んに伝えられたことも、進路選択に影響を及ぼしてきた可能性がある。
 現在の、景気回復や団塊世代の大量退職に伴う技術者の人手不足感は、ものづくりに興味があり、就職が気になるという層を掘り起こす材料になるだろう。
 ある国立大学の工学部で広報を担当する教員は、「『工学部よりは理学部に』という心理が、高校生にあるのでは」と話す。原因を「生物や化学の授業で理学部の学びはイメージできるが、工学分野への興味につながる科目が高校にはないため」と分析する。
 職業的イメージという点では、他の学問分野に比べ、工学と社会貢献とのつながりが見えにくいということも挙げられる。ベネッセコーポレーションが2005年に、大学生を対象に実施した「進路選択に関する振返り調査」からも、そんな意識が垣間見える。
 様々な資質を示して「専攻している学問を勉強する上で、どれくらい重要な能力や態度だと思うか」と聞いたところ、「人や社会の役に立つこと」を「とても重要」と答えた理工学系統の学生は36.4%だった。医歯薬看護学系統の84.6%との落差が目立つ。
 女子に人気がないということも、工学部の不振を目立たせている。理系分野における女子の志願状況を見ると、工学系統は1997年度をピークに、減少傾向にある(図2)。理系全体に占める割合は、同年度の19.0%から2006 年度は12.2%になった。

図表


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