大学のある大阪をキャンパスに見立て、1泊2日のツアーでそのキャンパスの魅力を伝える――。2006年8月、大阪観光大学で、オープンキャンパスのイベントの一環として希望者を対象とした大阪ツアーが実施された。ツアータイトルは「食べて・魅て・学ぶ OSAKAツアー」。観光を専門に学ぶ学生がツアーの企画から運営までをすべて手掛け、オープンキャンパスに来た高校生に大阪の街を体感してもらうイベントである。
日中は道頓堀などの観光スポットを巡り、お好み焼きやたこ焼きなどの食を体験してもらう。夜間は、学生と参加者がゼミ形式で大阪の魅力を語り合う。遊びと学びの両方をたっぷり取り入れたユニークな企画だ。
企画広報課の黒田能史主任は、その経緯をこう話す。「本学は2006年度に大阪明浄大学から名称変更した。受験生からの資料請求が増え、新聞などのメディアに取り上げられる機会も増えたが、この機を逃さずに次の一手を打ち、観光系の単科大学としての教育の特徴をもっと広くアピールしようと試みた」。
オープンキャンパスの来場者数は年々増えていたものの、増加率は頭打ち状態で、従来通りのプログラムでは、受験生の関心を引くことが難しくなっていた。学生が企画・運営するツアーとオープンキャンパスを組み合わせることで、観光系大学ならではの個性をアピールできる。地元・大阪の若者らしい楽しみ方を紹介することと、この大学で学んだ学生にはこのような企画力が身に付くという教育の成果を見てもらうことがポイントだという。
このツアーには、広報上の効果とともに、学生に対する教育上の効果も期待された。学生の指導に当たった橋本佳恵助教授は、「学生は、1年次から観光資源、地域の歴史や文化、接客やマナーなど観光に関する様々な専門知識を学ぶ。ただ、観光学は実学であり、実地に体験して初めて気付くことも多い。机上で学んだ理論を実践に結び付けるいい機会になった」と話す。
同大学では、旅行会社や航空会社、ホテルなどでのインターンシップ、フィールドワークを通して、実際の業務に触れる機会は多い。しかし、そこで自分たちが主体的にアイデアを出して何かを作り上げるという経験はできない。今回のツアーを企画し、ツアーリーダーとして同行することは、通常の教育プログラムとはまったく異なるチャレンジとなった。
「本学は実務者や将来の業界をリードする人材の養成を目的としているが、マニュアル的なことを学ぶだけではなく、学生が自ら考え実践することを重視している。この理念を実現するためにも、今回のイベントの意味は大きい」と黒田主任は強調する。
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