こうした環境変化の中、経営統合によって教学の充実や経営基盤の強化を図る私立大学が出てきた。
　関西地方にある学校法人Ｋ学院と学校法人Ｓ大学は、2008年度に合併する方向で検討すると、2006年２月に発表。その後、「よりよいものをつくりあげるため」に合併を2009年度に延期することを決めた。両校が「合併に関する包括協定｣を締結したことも、同時に公表された。合併の目的は、｢両法人のキリスト教精神にもとづく建学の理念を尊重して、幼稚園・保育所から大学院に至る総合学園の新たな創造を目指す｣＊４とされている。双方とも、一貫教育体系を完成させてブランド力を強化できるという利点がある。
　2006年11月、総合大学を擁する東京の学校法人Ｋ塾と学校法人Ｋ薬科大学は、2008年度の合併を前提とした協議を行うことを発表した。目的は、「研究連携や研究者交流による研究水準の向上が期待され、質の高い学生の確保など、私立大学が直面している競争的環境にも極めて有利に作用すると期待される」＊５と説明されている。
　なお、2006年11月に日本私立学校振興･共済事業団は、文部科学省から委託を受け、全国の国公私立大学、短大に対して｢大学経営強化調査研究｣を実施した。その目的は、｢経営基盤の強化に向けた成功事例の調査を実施し、分析・研究の成果を広く公表することにより、各大学、短期大学の自主的な取り組みを支援すること｣である。
　調査項目の中には、｢他大学とのＭ＆Ａ（統合･合併）を検討していますか」「Ｍ＆Ａを円滑に行うために何が必要ですか」など、Ｍ＆Ａに関する具体的な内容が含まれている。
　同事業団は、2005年４月に学校法人の合併の仲介や設置者変更、経営支援者の紹介などの業務を含む経営支援室を立ち上げた。2006年11月現在、同支援室の仲介によって実際に合併の合意に至った例はないが、合併などに関する相談は寄せられているという。