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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学教育が生み出す「適応」へのプロセス

 

高校生の気質が変わり、大学は入学してきた学生を「高校の学び」から「大学の学び」に「転換」させるため、様々な教学活動に取り組んでいる。
ベネッセ教育研究開発センターが実施した「第4回学習基本調査」の結果から高校生の受動的な学習態度や学習意欲の低下など、様々な課題が浮かび上がってきた。
大学という環境に「適応」させるためにはどうすればよいのか。
調査結果と大学の事例などから考察する。

ベネッセ教育研究開発センター「第4回学習基本調査報告書(高校生版)」結果分析

偏差値50前後の高校生に広がる
「受け身の学習」と「そこそこ志向」

ベネッセ教育研究開発センターは、1990年からほぼ5年ごとに小・中学生、高校生の学習意識や実態を把握するために「学習基本調査」を行っている。
ここでは、4回目となった2006年の高校生の調査結果を取り上げながら高校生の学習に関する意識と実態に迫る。

勉強する生徒としない生徒の学習時間差がさらに開く

図表

  図1は、塾や予備校などを含めた学校外での学習時間の推移を表している。今回の2006年調査では平日の平均学習時間は70.5分で、2001年調査と大差は見られなかった。しかし、「ほとんどしない」が24.3%、「およそ30分」が15.2%で、39.5%の高校生が、多くても30分しか勉強していないことになる。1990年調査の26.0%と比較すると、学習時間が30分以下の高校生は増加傾向にあることが分かる。

図表

 さらに、高校の偏差値帯別に学校外での平均学習時間を比較してみると、大きな特徴が見られる(上図)。2001年の調査結果と比較すると、偏差値50以上55未満の高校にのみ、学校外での学習時間の減少が見られる。偏差値45以上50未満の高校より約10分多かった学校外での平均学習時間が、2006年調査ではほぼ同じとなった。偏差値55以上の高校と、偏差値50以上55未満の高校の差は開く一方である。「勉強をする生徒、しない生徒の二極化」という話は、高校教員の間でもよくいわれている。今回の調査結果は、まさにそれを裏付ける形となった。

図表

 次に、高校生はどのような家庭学習をしているのかを見てみる。図2によると、「学校の宿題」が86.4%、「学校の授業の予習」が56.5%で、この2つが家庭学習の中心であり、それ以外は半数にも満たない。「学校の授業の復習」は34.7%であり、「学校の授業の予習」よりも21.8ポイントも低い。高校生は、復習より予習に取り組んでいるようだ。
 しかし、この調査の企画・分析に携わったベネッセ教育研究開発センターの十河(そごう)直幸氏は、「予習の質の変化」が背景にあることを指摘する。「確かに家庭での学習は予習中心だといえる。しかし、予習の内容は教員から事前課題として与えられているケースが増えている。つまり、『宿題として与えられた予習はきちんとやる』という見方が適切ではないか」と分析する。


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