特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 6/37 前ページ 次ページ

インタビュー●調査結果が提起する課題とその解決策を探る

二極化する高校生
受け入れる大学はどうあるべきか

お茶の水女子大学大学院 耳塚寛明教授

「第4回学習基本調査」の結果、近年の高校生の気質が浮かび上がり
家庭での学習時間や進路意識の二極化など、様々な課題が提起された。
調査分析を担当したお茶の水女子大学大学院の耳塚寛明教授に
調査結果に基づいた高校生像と、大学はこれらの課題にどのように取り組むべきかを聞いた。

広き門となった大学入試の恩恵を受けた成績中位層

 ベネッセ教育研究開発センターが行った「第4回 学習基本調査」の結果について、お茶の水女子大学大学院の耳塚寛明教授は、まず、高校生の学校外での学習時間の二極化を指摘する。過去3回の調査では、学校外での平均学習時間が毎回減っていた。しかし今回の調査結果によると、学校外での学習時間はほぼ下げ止まり、偏差値55以上、偏差値45以上50未満、偏差値45未満の高校の学校外での平均学習時間は、前回より増加した。唯一、減ったのは、偏差値50以上55未満の高校である(下図)。

図表

 「偏差値50以上55未満の高校と偏差値55以上の高校の、学校外での平均学習時間には2倍近い開きがあり、『学習する者』と『学習しない者』にはっきり分かれていることが表れている」(耳塚教授)
 二極化は、学習意欲の面にも表れている(5ページ図7)。偏差値50未満の層に「将来ふつうに生活するのに困らないくらいの学力があればいい」といった「そこそこでよい」と思う価値観の高校生が増えており、「できるだけいい大学に入れるよう、成績を上げたい」と思う偏差値50以上の高校の高校生との二分化が進んでいる。
 なぜこのような二極化が起きているのか。耳塚教授は、その要因の一つに「脱受験競争時代の到来」を挙げる。
 「少子化を背景に、大学は実質的な収容力が拡大し、大学入試は著しく広き門となった。しかも、AO入試や推薦入試などの様々な入試形態を導入する大学が増え、一般入試を受験しないという選択肢が増えた関係で、大学に入ること自体は難しくなくなった。高校生はこの状況を十分に把握していて、以前のように入試が学習の動機付けになりにくくなっている」
 しかし、入試が広き門になったとはいえ、難関大学には、競争に勝ち残らなければ入学できない。いわゆる難関大学への進学者が数多く輩出する偏差値55以上の高校の生徒は、いまだに激しい受験競争にさらされ、入試が学習の動機付けになっているが、偏差値50以上55未満の高校の生徒は易化した大学入試の恩恵を受け、学校外での学習時間が少なくなったのだろう。


  PAGE 6/37 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ