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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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塾通いが影響?教えてもらうことが当たり前

 学校外での学習時間が減った高校生に対し、高校はどのような指導をしているのだろうか。耳塚教授は、宿題を課すことで家庭での学習を促す高校の指導実態を、次のように話す。
 「先日、別々の高校で2年生を担当する3人の教員と、今回の調査結果について座談会を行った。どの高校でも家庭学習の習慣化が課題で、自ら机に向かおうとしない生徒をどうやって勉強させるかが悩みだと話していた。各校の取り組みで驚いたのは、『予習』を『宿題』として課していることだ。生徒は予習の中で悩んだという体験をすれば、授業をきちんと聴こうとして確実な理解につながる。教員は、クラス全員が予習をしてくれば、授業をスムーズに進められるという。しかし、予習とはいっても、生徒が自主的にしているのではない。年度当初に予習の仕方を丁寧に指導し、その通りに予習をするように指示したり、教員が作った予習用プリントを宿題として配付したり、と教員が細かく指導している」
 高校教員も、本来、自発的な学びであるはずの予習を宿題として課すことに抵抗を感じているという。しかし、放っておけば学習時間は確実に減少し、学力が伸びないという現実に直面して、まずは机に向かわせることが大命題になっている。
 「教員も本当は生徒に自ら勉強してほしいのに、手取り足取りの手厚い指導をせざるを得ない。このような矛盾を抱えているのが、高校の現状といえるだろう」と、耳塚教授は話す。

図表

 図1は、小・中学生、高校生の通塾率を示している。学習塾や予備校に通う高校生は年々増えており、2006年調査では1990年調査の2倍となった。高校で学習塾や予備校に通っていなくても、中学生の通塾率の高さを考えると、通塾経験のある高校生は相当数いると思われる。高校生が受け身の学習を好む背景には、高い通塾率も影響しているのではないかと、耳塚教授は指摘する。
 「学習塾だけではなく、水泳やスキー、書道などの習い事を幼少時から経験している子どもが多いようだ。スポーツでも遊びでも、何か新しいことを始める際には『まずやってみる』のではなく、『それを教えてくれる教室やスクールに行く』ことが一般的になっている。子どもは何事も教わることに慣れているようだ」(耳塚教授)
 ところが、大学での学びは、学生が主体的に行うものである。
 「大学に入れば、教員から教わるだけの『生徒』から、自ら学ぶ『学生』になり、通うのは『学校』ではなく『大学』となる。ところが、根っからの『生徒』を『学生』に変えるのは難しい。例えば、本学には、2年生になっても、自分のことを『学生』とは言わずに『生徒』と言う学生が増えている。また、『講義』を『授業』と言う学生も多い」と言う耳塚教授の言葉は、自身が学生であるという自覚が足りず、「教えてもらう」という意識から抜けきれていない学生が多いことを示している。


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