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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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初年次教育には組織的な関与が必要

 初年次教育の充実を図るため、同大学は2004年に「初年次教育研究開発センター」を設置した。
 「初年次教育は個々の教員それぞれが努力してできるものではなく、大学が組織的にコーディネートすべきものだ。そのためには、初年次教育を専門に扱うセンターのような存在が必要だろう。本学では、各学科の担当教員がセンターの運営委員になり、標準シラバスを作成する。それに基づき、各学科が必要に応じて独自に加工したものを、再度全学の担当者によるFDで検討・修正するという方法で、初年次教育のノウハウをセンターに蓄積している。アメリカでは、初年次教育自体がFDの効果を持つといわれている」
 今後の課題として、濱名学長は、初年次教育と専門教育のつながりを指摘する。
 「多くの大学では、2年生が中だるみ状態にある。本学でもまだ解決できていないが、キャリア教育がその問題解決の糸口になると考える。しかも、従来のキャリア教育を前倒ししたものではなく、自己分析や将来イメージの伸展などを通して、自らの生き方を探求するような内容にすべきだ。初年次教育は『大学生活への移行』を目的としたプログラムだが、新たに『職業生活への移行』を目的としたキャリア教育の必要性が高まっているといえる」
 最後に、濱名学長はこう強調する。
 「初年次教育では、スタートラインをどこに置くかが極めて重要になる。『学習面での適応』をリメディアル的なものから始める大学もあれば、最初からアカデミックライティングの技術を教える大学もある。いずれも、その大学のミッションや到達目標と深く関わっているはずで、内容やレベルはそれぞれに異なっていてもよい。しかし、『社会的な適応』に関しては、大学間に大きな差はない。いずれにせよ成功の鍵は『いかに自学を好きだと思わせるか』ということにあるだろう」


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