特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「適応」を目指す教育事例…1

ポートフォリオシステムと修学アドバイザーが
PDCAサイクルの形成と大学への適応を促進

金沢工業大学

先進的な教育改革で知られる金沢工業大学は、初年次教育にも独自の手法を取り入れ、成果を挙げている。
同大学の初年次教育プログラムは、学生に行動記録を書かせることで「気付き」を促し
自らPDCAサイクルを形成し、大学に適応していくよう「修学基礎」を中心に組み立てられており
これに「KITポートフォリオシステム」を有効利用することが、大きな成果を生んでいる。

基礎教育部を新たに組織し修学基礎教育に注力

 金沢工業大学は「学生が主役の大学」を標榜し、「夢考房キャンパスの実現」を実践目標としている。学生部長で基礎教育部修学基礎教育課程主任の藤本元啓教授は、その意味を「年間授業日数の約150日に、日曜・祝日以外の約150日を加えた約300日間を充実させるため、教員や友人と自由に学び、議論し、情報を集め、実験し、ものをつくり、発表し、コミュニケーションを楽しむことができるよう、大学の教育内容と環境を構築することを目指した概念」と説明する。その実現に向け、ものづくりのための自由空間「夢考房」や、ライブラリーセンター、24時間使用可能な自習室、個別指導で自習を支える工学基礎教育センター、文章添削指導を行うライティングセンターなど、様々な仕掛けを用意した。正課の授業、正課外のプログラム、いつでも活用できる学習支援施設など、全学を挙げて学生の修学を助けるシステムを構築している。
 同大学の教育目標は「自ら考え行動する技術者の育成」であり、自学自習を基本としたカリキュラムを組んでいる。学生は初年次に、「覚える学習」から「自ら考えて、行動する学習」への切り替えが求められるが、この切り替えが大学への「適応」につながる。
 大学への適応を学生に促すために、2004年に設置したのが「基礎教育部」だ。その背景には、学生の気質の変化があった。
 「2000年頃から明らかに学生の質が変わってきた。本学は3学期制で、1年次の1期を準備期間とし、フレッシュマンセミナーや日本語能力のスキルアップを通して、新入生の大学への適応を促していた。ところが、夏休みが終わると教育効果が失われてしまっている。いい加減な対応では、大学での学びに必要な学習スタイルは身に付かないと考え、『入り口』での教育を強化することにした」(藤本教授)
 同大学は基礎教育部に「修学基礎教育」「外国語教育」「工学基礎教育」「工学基礎実技」の4課程を設け、学生の適応を全学で組織的に支援する。大学での学習スタイルを身に付ける修学基礎教育には特に力を入れており、「修学基礎」「進路ガイド基礎」「技術者入門」「人間と自然」などの講座を設置している(図1)。特に、修学基礎は初年次教育の基幹科目であり、学生の適応を促す第一歩となる。

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図表

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