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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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修学基礎教育を媒介に、初年次教育と専門教育を接続

 修学基礎教育に設置されるほかの科目は次の通りだ。「進路ガイド基礎」は、自分の過去を振り返り、未来の自分を想定しながら自己を再認識・再発見する科目だ。3年次の「進路セミナー」につながり、ここでは「キャリアポートフォリオ」を活用する。「技術者入門」は技術者としての倫理観などを学ぶ科目で、「人間と自然」は同大学の海洋研修施設で、思いやりの心とチームワークの大切さを身に付ける体験学習だ。これらに、工学基礎教育課程などの専門教育への導入にあたる教育課程を加えたものが、金沢工業大学の初年次教育といえる。
 修学基礎教育は、同大学の「アクロノール・プログラム」の重要な構成要素であり、初年次教育は学士課程教育に組み込まれている。修学基礎教育を基盤としながら「工学設計」を中心に、様々な教育プログラムや課外プロジェクト活動などから得た技術や知識を「KITポートフォリオシステム」に蓄積していくことで、自然にPDCAサイクルを形成しながら自己実現が図れるように構成されている。このポートフォリオシステムを利用して学ぶ意欲を引き出す教育活動は、2006年度の特色GPに採択された。
 金沢工業大学は、こうした取り組みによって初年次教育で成果を挙げてきたが、藤本教授は今後の展望を次のように語る。「初年次教育と専門教育の接続が大きな問題で、本学もまだ解決できていない。1年次の修学基礎を媒介に、修学基礎課程と専門課程の教員がコミュニケーションを深めていくのが理想だろう」
この実現に向け、アクロノール・プログラムが今後どのように展開されていくのかが注目される。

*acro(最高)とknowledge(知識)を合わせた造語


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