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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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レポートやプレゼンを通して自己表現力を伸ばす

 「教養セミナー」は科目目標として、「自主的学習へのオリエンテーション」を掲げている。到達目標には、「知的活動への動機付けを高める」「科学的思考方法と学習・実験のデザイン能力を育てる」「レポートと口頭によるプレゼンテーションとディスカッションを通じた適切な自己表現力 を育てる」「学生と教員、学生相互間のコミュニケーションを図る」の4つを設定している。
 教養セミナーは、研究テーマを学生が自ら決め、調査や実験を行い、レポートにまとめ、プレゼンテーションを行うという展開で進められる。最初の授業で教養セミナーの目標の説明や自己紹介などを行い、2週目以降の授業でテーマを決める。テーマの決定には3〜4週の授業時間を費やす。
 「大切なのは、教員と学生が話し合ってテーマを決めること。安易に多数決で決めても、本人が納得しないと渋々参加することになる。教養セミナーは大学入学後の最初の授業となるだけに、その後の授業への姿勢に大きく影響する。話し合いを重ねながら、できるだけ全員が納得できる形にする、というプロセスを大切にしている」と、高橋教授は強調する。
 結果的に1人1テーマになるクラスもあるが、大半は1クラス数テーマに収束する。
 テーマ設定に当たっては、教員が自分の専門分野を押し付けることがないように徹底し、学生と同じ視点に立つことを重視する。ただし、教員の専門分野に関連したテーマでも、社会的に重要な課題であれば採用する。要するに、教養教育、全学教育の観点から見て、適切なテーマになっていることが重要だ(図2)。

図表

 高橋教授のクラスを例に挙げると、クラス全体で1つの研究テーマを決め、次にサブテーマを決める。サブテーマごとに希望者を募ってグループを作り、グループリーダーの下で作業を進める。研究手法はアンケートや現地調査が多い。研究結果をクラスで報告し、他グループとのディスカッションを通して、サブテーマ同士の関連性を考慮しながら、次回の調査活動に入る。その間、教員は進捗状況を把握しながらアドバイスを行う。
 「調査活動では何をポイントにして調べればいいのか、それをどんなストーリーに仕上げていくのかを助言するのも教員の役割の一つ。ディスカッションでのリードも含め、学生の活動をいかにサポートできるかで、教員の力量が問われる」(高橋教授)
 大半のクラスでは、8〜9週目の授業で中間発表をして方向性を確認する。さらに、12〜13週目にグループ単位で分担して、レポート執筆を始める。学生は教員からアドバイスを受け、それを最終的なレポートにまとめて、14〜15週目に結果を発表する。こうして半期15週で終わる。
 2006年度には、2、3クラス合同の発表会も行った。「90分の授業時間内に学生全員が発表できる機会を設けたかったので2、3クラスのみ合同とした。他クラスと合同ということから緊張感が出て、競争意識が生まれた。学生のやる気が高まり、生き生きと発表の準備をしていた」と、高橋教授はその効果を実感する。
 教養セミナーには共通シラバスがあり、授業の流れが示されている。これとは別に、教員は個別シラバスを提出する。本来、シラバスは授業開始前に学生に配付するものだが、教養セミナーの特質上、個別シラバスはテーマが決まってから作成し、配付してもよいことになっている。
 共通シラバスには成績評価基準が明記され、個別シラバスには詳細な基準が掲げられる。高橋教授の場合、レポート60点(文章構成20、自分の言葉かどうか20、発想のオリジナリティ20)、プレゼンテーション20点、授業貢献度20点に設定している。この基準に沿ってAA〜Dの5段階で成績を付ける。
 「教養セミナーの本来の趣旨から言えば、評価の考え方は、大学の学習に適応する能力が付いたか付かないかのどちらかであり、『合』か『否』の2段階評価の方が適切だ。しかし、それでは大半が『合』になりやすく、頑張った学生とそうでない学生の差がつかない。一方、本学のような5段階評価だと、クラス内では公平かもしれないが、教員の評価基準によってクラス間の成績の整合性が疑問となる。一長一短があって悩ましい」(高橋教授)


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