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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学生の評価は高く、専門課程教育にも効果

 「教養セミナー」に対する学生の評価はおおむね高い(図3)。履修後の1年次に実施した授業評価アンケートの結果を見ると、学生の評価は多くの項目で肯定的だ。特に「自ら調べて学ぶ機会があった」は毎年100%近くの評価を得ており、「自主的学習へのオリエンテーション」という目標はほぼ達成されているといえる。自由記入欄には、「他学部の学生と知り合いになれ、人間関係が広がった」とする意見が多数書かれており、多様なものの考え方を醸成する上での役割を果たしていることが分かる。

図表

 今後の課題は、学生同士、学生と教員のディスカッションや、授業中の発言に対する評価の低さをどう高めていくかにある。アンケートの結果では、ディスカッションや発言の「機会があった」と評価しているが、それらを「行った」と評価する学生は少ない。一方、教員に対する質問では、そうした機会を「与えた」とする割合が、学生が「あった」「行った」と答えた割合よりも高かった。
 「教員が機会を与えても、学生はそう捉えていないし、その機会を利用していないという。毎年その傾向は変わらない。FDでも毎回議論しているが今のところ有効な解決策はない。学生の自主的な参加を促すよう、地道に努力していくしかない」(高橋教授)
 教養セミナーが大学への適応を促す初年次教育として成功しているかどうかの判断に、高橋教授は慎重だ。しかし、2〜4年生に対するアンケートでは、「『教養セミナー』は今後の大学での学習活動に有意義であると思った」「『教養セミナー』は今後も続けるべきだと思った」に対する肯定評価はいずれも50%を超えた。
 「これは、学生が専門科目を学ぶようになってから教養セミナーを振り返った評価で、初年次教育と専門教育との連携という観点から言えば、ある程度効果があったのではないか」(高橋教授)
 学内には、学部ごとに教養セミナーを実施したいという意見が根強くある。専門外のテーマに対する指導を疑問視し、同じ志向の学生同士で学習する方が効果が高い、と考える教員もいる。しかし、教養セミナー履修後の学生へのアンケートでは「『学部混成型』は今後も続けるべきだと思った」に70%以上が評価を寄せており、今後も学部混成の少人数セミナーとして地道な努力を重ねていくことになるだろう。


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