特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「適応」を目指す教育事例…3

キャンパスコミュニティを意識したプログラムで
大学への適応と学生相互の成長を図る

同志社大学

同志社大学は「学生支援センター」を設置し、京田辺校地で主として学ぶ1・2年生に対する
様々なサポートを行っている。正課以外の活動を通して、新入生だけでなく
すべての学生を大学生活に適応させるユニークな取り組みの一つとして注目されている。
大きな特徴は、上級生を活用した相談システムと、多彩な体験型のプログラムを取り入れていることだ。

上級生を関与させ、大学への適応を促進

 同志社大学は、2004年に開設した教育開発センターに「導入教育部会」を設置し、導入教育モデルの策定を開始した。一方、同大学は正課教育だけでなく、初年次教育に関わる正課外プログラムにも熱心に取り組み、学生に対して大学への「適応」を促している。推進するのは、学生支援センター(S-cube)だ。
 「S-cubeの活動は、初年次教育に特化したものではなく、多くの1・2年生が学ぶキャンパスの特性に配慮した支援だ。これが結果として、初めて大学文化に触れる新入生に対する支援につながっている」と、京田辺校地学生支援課の桂良彦課長は説明する。
 S-cubeは2002年、京田辺校地に組織された(2004年、学生部を含む組織再編により、新たな「学生支援センター」として誕生)。障害のある学生や留学生への支援に至る多岐にわたる活動を行っているが、この中でも、正課外の立場から初年次教育に関わる分野は、京田辺校地のみに設置されている啓発支援係が担当する。
 京田辺校地は、主に3・4年生が学ぶ今出川校地と地理的に離れており、1・2年生は上級生との日常的な交流が少ない。また、近隣には他大学が少なく、他校の大学文化に接する機会も乏しい。啓発支援係の大亦祐子係長は、「例えば、就職活動でまなざしが変わっていくスーツ姿の先輩(モデル)を目にすることがない状況では、下級生は自分自身が上級生になった姿を想像しづらい。上級生からの情報提供の場や、彼らとの接触の場を積極的に創出する必要があった」と説明する。
 S-cubeのミッションは3つある。第1に、学生が大学生活を送る上で困ったことを何でも相談できる「総合案内」機能を提供することだ。一般的に大学では、学習上の相談については教務課、課外活動や奨学金などの生活面のサポートは学生課が担当するなど、窓口が業務別になっているため、新入生に分かりづらい。そこで、とりあえずS-cubeに来れば何とかなる「何でも相談」の機能をつくった。
 第2に「自己啓発のサポート」を行うことだ。例えば、大学院に進学したい、NGOで活動したい、異文化体験をしたい、資格の勉強を始めたい、などと思い立っても、先輩が同じキャンパスにいないために、詳しい情報が手に入りにくい環境にあった。そこで、ニーズに応じて適切な情報を提供するシステムをつくった。
 第3に、「大学生活の活性化」を推進することだ。キャンパスが2つあり、先輩から後輩へと学生文化が継承されにくい環境にあるため、新入生が自らの力でキャンパス文化を創造し、次世代へ継承できるよう、京田辺校地でのコミュニティづくりを進める工夫を行った。
 さらに、これらの3つのミッションに、何らかの形で上級生が関わるような仕掛けをしている。「新入生にとって、上級生は教職員よりも、学生生活の具体的な知識や経験を伝えてくれる身近な存在である。適切に対応できる上級生を活用することで、3つのミッションを効果的に果たすことをねらった」と大亦係長は話す。


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