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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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実践的な研修でアドバイザーを育成

 3つのミッションに応じた活動のうち、初年次における大学への適応を助ける内容を紹介する。  まずは、「総合案内」の機能だ。S-cubeでは、学生のあらゆる相談を受け付ける。S-cubeの職員では対応が難しい内容の場合、専門部署につないだり、相談に来た学生と一緒にインターネットや情報誌などで学外のリソースを探したりして、その場で解決することを目指す。また、ここでは対話を重視する。
 「学生が『留学したい』と相談に来たとする。しかし、話を進めるうちに、本当の目的は、異文化交流を体験したかったのだと分かることがある。このように意図が明確になれば、留学だけではなく、学内でのいろいろな異文化交流の機会や、海外ボランティアを紹介するなど、適切な支援が可能になる。S-cubeは、対話を通して学生の目標を明確化するような、コーチングやコンサルティングの役割を目指している」(大亦係長)  上級生は「ぴあメンター」「ぴあアドバイザー」として下級生を支援する。
 ぴあメンターとは、特定のトピックについて下級生の相談に乗る上級生のことで、学内で公募される。就職活動が終了した4年生が多いが、3年生もいる。交通費のみが支給される無償スタッフだ。例えば2007年5月のトピックは、「異文化体験」「早稲田大学との交換留学」「転学部」「カナダ留学体験」などがあった。ぴあメンターは週1回、担当の曜日に2時間程度、S-cubeのラウンジで下級生の訪問を待つ。大学からの一方的な情報ではなく、学生の視点による「ナマの声」が聞けると、利用者から好評だ。
 ぴあアドバイザーとは、毎年4月に行われるオリエンテーションの期間、キャンパス内のブースに常駐し、新入生の相談に応じる上級生のことで、主力は2年生だ(写真)。相談件数は年々増えており、新入生の力強いサポーターである(図1)。

図表
写真 ぴあアドバイザーは、1週間あるオリエンテーションの期間中、交代でブースに常駐する。S-cubeのオリジナルジャンパーを着ており、誰がアドバイザーか、一目瞭然

図表

 「各学部のオリエンテーションは講義形式であることが多く、学部の相談窓口には長蛇の列ができる。新入生にとって、ちょっとした質問がしづらいのが現状だ。『どこで聞いたらよいか分からない』という新入生をフォローする意味で、ぴあアドバイザーを配置することにした」(大亦係長)
 ぴあアドバイザーには、新入生からどのような質問をされても対応できるように、事前に2つの研修が課せられる。まず学内に1泊し、学外から招いたコミュニケーションスキルの専門家によるチームビルディングや1対1でのコミュニケーションスキルを実習形式で学ぶ。ぴあアドバイザー同士の連帯感を育て、コミュニケーションの重要性を認識してもらうことが主な目的だ。ほかに、毎日4時間の実質的な研修を2週間かけて行う。その内容は、掲示板・各相談窓口の位置の把握や、履修登録の流れと特色の把握などだ。新入生役を交代で務めながら、全員がシミュレーションを行う。
 ぴあアドバイザーの報酬は、研修中は無給だが、オリエンテーション期間の相談業務に対しては、学内規定の時給が支払われる。応募する学生の動機は「時間があったから」「自分が1年生のとき、お世話になったから」「純粋にアルバイト感覚で」など様々だ。しかし、「研修を続けていくうちに、人間関係を築き、サークルのようになっていく。どんな動機にせよ、共通しているのは『仲間と一緒に何かをやってみたい』という気持ちであり、そこで培った仲間意識がキャンパスのコミュニティづくりにも貢献している」と大亦係長は評価する。


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