特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 33/37 前ページ  次ページ

学生が求める魅力的な教員像

 周知の通り、導入教育の専門家は日本の大学にはほとんどいない。多くの場合、専門課程の教員が基礎演習を担当するが、大学教員は、普遍的で基本的な学習スキルに関しては素人と化してしまう。これを恐れ、自分の専門分野の価値をストレートに学生に伝えようとするが、多くの場合、教員の熱意はうまく伝わらない。教員は「なぜ学生はこの(私が興味深いと思う)専門のテーマに興味・関心を持たないのだろう」と愚痴をこぼすことになる。
 導入教育に関して言えば、学生から見た魅力的な教員像は、魅力的な専門家像とは一致しないことを知るべきだ。学生は、基礎演習の教員に「親しみやすさ」「教え方の上手さ」「自分の学力に合ったレベルでつまずきを指導するきめ細かさ」を期待している。
 さらに、基礎演習では「どれだけの教育スタッフがどれだけ時間と労力を払えば、どれだけの効果が上がるか」という合理的な判断も求められる。授業で教員が努力しさえすれば教育の効果が上がるはずだ、という精神論を大学が抱いている限り、基礎演習だけの導入教育を行っても成功しない。
 金沢工業大学(19ページ参照)の「修学基礎」での修学アドバイザー制度は、大学が学生にどれだけの時間と労力を投資すればどれだけの効果が上がるか、ということを見極めて取り入れたきめ細かい指導体制である。効果が上がるべくして上がる仕組みなのだ。
 このように、基礎演習には、コースのデザインと教授法を指導するコーディネーターのような存在が重要であることが分かる。大規模校では、この部分を大学付置機関の大学教育センターなどが担うことも有効だろう。きめ細かい指導体制があれば、さらに効果的である。そして、担当教員の資質としては「親しみやすい」ということが求められる。しかし、ここまで気が付いている大学は少ない。また、気が付いても実施に踏み切れる大学はあまりにも少ない。


  PAGE 33/37 前ページ  次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ