「教育機関のクオリティはプロセシングに裏打ちされたインプットとアウトプットとの差である」と弊誌2006年夏号のブランディングをテーマとした特集で述べた。では、高等教育機関の質の保証が叫ばれる中、このプロセシングをどうやってステークホルダーに伝えることができるだろうか。
何ができるようになるかという「ラーニングアウトカム(Learning Outcomes)」が国の審議会でもキーワードとなっているが、アウトカムがことさらいわれるのは高等教育段階に特有のことともいえる。通常、教育機関における成果は、常にその制度設計上、次の階梯へ上がる時点で測られてきた。この接続過程がアウトカムとレディネスを測り、社会的にもスクリーニング機能を果たしてきた。学校がというよりは、制度自体がアウトカムを保証してきたといえる。
しかし、教育制度上の最終段階である高等教育は、社会という教育機関とは異質な世界との接続をしなければならないがゆえに、アウトカムが問題となる。この接続を考えるためのキーワードが「学士力」であり「社会人基礎力」である。いずれも「どのような能力を育成すべきか」という社会的な観点から議論がなされるようになったことで、ただ単に有力企業への就職率や資格取得率を争うような「ランキング」よりは議論が前進したことは事実である。しかし、さらに重要なことは、これら育成すべき能力をどういう仕組みをもってして保証するのかということである。たとえ同じようなゴールを目指したとしても、それぞれの大学で活用できる経営資源が同じということはあり得ない。その意味でもこの「仕組み」にこそ、それぞれの大学の個性が宿るのである。この個性こそ、これからの時代にステークホルダーに伝えるべきものである。
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