特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 4/33 前ページ 次ページ

教育計画と計画策定の根拠を積極的に発信すべき

 このようなことを考えたときに脳裏に浮かぶのは、最近、よく耳にするようになった「大学教育開発センター」あるいはそれに類する名称をもった部門のことである。名称から察するに教育機能の高まる大学のまさに心臓部とも捉えられる。アメリカの大学には大学全体の各種調査を行う“Office of Institutional Research”なるものがある。イェール大学を例に挙げれば、主たる機能は、大学の意思決定に際しての様々なデータの収集・分析・研究であり、主に経営層を対象としたものだが、併せて教育や運営に関してもレポートをする部門である。例えば、学生のモチベーションマネジメントを的確に行うためには、どのような学生が入ってくるのかを初めに的確に捉えていなければならないように、あらゆる教育改善の出発点は的確なデータ収集によって始まるといえるだろう。これまでの論旨に従えば、優れた「構造設計」のための「設計力」は、的確な現状把握の上に可能となると言える。“Office of Institutional Research”はこれを担うものだと捉えることができるし、各大学における教育メソッド開発の拠点になるだろうと想像する。
 大学の外にいるわれわれにとって、教育の、しかもそのプランづくりの過程はまさに「ブラックボックス」である。もちろん、それは独自のノウハウの塊であり、おいそれとは公開できないものなのかもしれない。しかし、一般の消費財と異なり、事前に確かめて「購入」はできないし、もし選択を誤って購入し、その後に交換したいと思っても簡単ではない。また、卒業生を見れば教育の真価が分かるのか、と言えば、それもなかなか難しい。
 そんな中、大きな手掛かりとなるのは、教育計画の背後にある考え方とその考え方をどのように具現化しているか、具現化の際にはどんなデータに基づいて、すなわちどのような根拠でそうしているのかといったことである。これらを積極的に発信することによってこそ、教育機関としての個性がより明確になるのではないかと考える。


  PAGE 4/33 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ