今後は、ESDの先進校にふさわしい教育・研究成果を挙げ、日本、ひいてはアジアにおけるESDをリードしていくだけのプレゼンスを確立することが目標だ(図2)。玉副学長は「イギリスではすべての高等教育機関でESDに取り組む方針が打ち出されており、今後はヨーロッパ全域に波及すると考えられる。アメリカの大学でもESDを取り入れる動きが活発化しつつある。岩手大学は『学びの銀河』プロジェクトによって、日本におけるESDの普及に貢献したい」と意気込む。
同大学の魅力を学内外にアピールするための旗印としてESDを活用することが、今後の課題である。「学びの銀河」プロジェクトは、独自性と実践性が高く評価され、2006年度に現代GPに採択された。教養教育の再構築という面でも、教養教育の在り方を模索する多くの大学の注目を集め、問い合わせが後を絶たない。
こうした評価に比べて、受験生や高校の進路指導担当者の認知度はいまひとつというのが実情だ。大学説明会では必ず同プロジェクトについて触れているが、それほど大きな反響はないという。玉副学長は、「全学的にESDを推進する大学は、国内では本学だけ。受験生の共感を得られるよう、特色をアピールしていきたい」と語る。
2005年には県のエネルギー教育の研究拠点である「いわてエネルギー環境教育ネットワーク(INEEE)」の事務局を学内に置き、小・中学校、高校を対象としたエネルギー教育、環境教育を積極的に展開してきた。2006年からはESDの観点を盛り込み、INEEEを通してESDの普及を図っている。
学内では、隔月ペースで「ESD銀河セミナー」を開催している。川、森、宮沢賢治の思想など、地域に関するテーマからクリティカルシンキングのスキルを身に付けるための国語力セミナーまで、多様なテーマを市民にも提供する。2007年8月には、「持続可能な未来のための教育〜アジアにおける大学の役割と連携〜」と題し、プロジェクト導入以来最大規模のイベントとなる国際シンポジウムを開催した。県内の多様な機関の協力を得ながらイベントを成功させるなど、ESD先進校としての存在感を示しつつある。
今後、様々な取り組みで、岩手大学の教育力である「旗印」をいかに大学の広報に結びつけていくのか、同大学の手腕が注目される。
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